「もとい」の意味とは?
そもそも「もとい」とは、どういう意味で使われる言葉なのでしょうか。正しい意味や語源を知り、正しく「もとい」を使えるようになりましょう。
もといは「言い間違いを訂正」するときに使う言葉
もといとは、言い間違いを訂正するときに使用する言葉です。もといは自分と相手の関係性や場面にかかわらず使え、難しい文法ルールもありません。気軽に使用できる言葉といえるでしょう。
もといを使えば、いちいち言い誤りや訂正を宣言して仕切り直す必要はありません。言い間違えた言葉と本来伝えたかった言葉を「もとい」でつなげばよいため、表現としてもスマートです。
ちなみに一般的にもといはひらがなで書きますが、漢字では「元い」と書きます。パソコンやスマートフォンでもといと入力して予測変換に「基」と表示される場合がありますが、これは誤りのため注意しましょう。
「もとい」の語源は?
もといの語源には二つの説があります。『軍隊の号令説』と『髷(まげ)の元結(もとゆい)の別名説』です。ただし、正確な語源は分かっていません。
『軍隊の号令『もとへ』がもといに変化した』というのが一説です。もとへは号令がうまくいかなかった場合に、元の姿勢に戻るよう軍の指揮官や上官などが命じるときに使います。それが言い間違いを訂正する意味で使われはじめ、発音ももといに変わったといわれています。
髷の元結の別名説の元結とは、髷を結うときに使う細い紐のことです。昔は床屋が髷を結い直していたことから、『初めからやり直す』というニュアンスで使われるようになったといわれています。また、元結には「もっとい」という別名があり、これが縮まってもといになったようです。
間違いやすい「もとえ」
「もとい」と同じ用法で「もとえ(もとへ)」を使う人もいるでしょう。しかし、これは正しい使い方ではないと考えられています。
軍隊の号令説では「もとへ」が「もとい」に変わったとされていることから、一見すると「もとえ」が正しいように思えるでしょう。
しかし、現在正しい使い方とされているのは、もといだけです。もとえはもといの訛りや、誤用とされています。「もとい」のつもりで「もとえ」と言っていた人は、今後は使い方に注意が必要です。
「もとい」の正しい使い方
「もとい」には、「もとえ」との言い間違い以外にも注意するポイントがあります。例文とともに注意点を押さえ、もといの正しい使い方を理解しましょう。
話し言葉で使う
「もとい」は話し言葉で使う単語で、書き言葉では基本的に使いません。理由は単純で、書き間違えたときは書き直せばよいからです。
前の発言を撤回する効果があることから、ジョークや皮肉を言う場面で「もとい」を使うことがあります。うっかりした失言を装いつつ、訂正される側の言葉に本音を乗せる使い方が可能です。
「もとい」の使い方で注意したいのは、あくまで『自分の発言』を訂正する場合にしか使えないことです。自分以外の人の言い誤りを訂正するときには、「もとい」は使えないため注意しましょう。
「もとい」の例文
まずは、単純に言い間違いを訂正する「もとい」の例文を紹介します。
- 集合場所は駅の西口、もとい東口です
- 帰社日は19日の金曜日…もとい18日の金曜日です
- 明日の天気は曇りときどき晴れ、もとい晴れときどき曇りです
続いて、ジョークや皮肉における「もとい」の例を挙げましょう。
- Cさんは重箱の隅をつつくような、もとい周りのことによく気づく人です
- このカレーはまずい…もとい独特な風味がします
- Dさんは守銭奴、もとい無駄遣いをしない人です
- この企業では長時間労働が当たり前…もとい成長のチャンスをたくさん与えてくれます
言い換えのできる「もとい」の類語
「もとい」には似たような意味を持ち、言い換えのできる類語があります。もといの類語を把握し、語彙を増やしましょう。
ではなく
「もとい」同様に、「ではなく」も先に述べたことを否定して別のことに言い換えるときに使う表現です。ビジネスなどのフォーマルな場面でも使用できます。
- この地域の営業担当はEさん、もといFさんです
- この地域の営業担当はEさん、ではなくFさんです
上記の例のように、「もとい」と「ではなく」のどちらを使っても、内容に違いはありません。ただし、もといの方がよりスマートなニュアンスを与えるのではないでしょうか。目上の人や取引先などの人との会話で言い直すときは、「もとい」を使ってみましょう。
ならぬ
「ならぬ」は「もとい」や「ではなく」の類義語ですが、少し異なる使い方をする言葉です。文法的には、動詞「なる」の未然形に、打ち消しの助動詞「ぬ」が付いています。
- 若くして彼が部長になった裏には、並々ならぬ努力があった
- 平素は一方(ひとかた)ならぬご高配を賜り、この場をお借りして改めて御礼申し上げます
ここで注意したいのは、「ならぬ」では直後の言葉が直前の言葉の言い換えにならないことです。「並々ならぬ努力」なら、「並々」を「努力」で言い換えるのではなく、「並々ならぬ」を1語として「努力」を修飾します。
「もとい」のまとめ
「もとい」は自分の言い間違いを訂正するときに使う口語表現です。もといを使えば、「間違えました。言い直します」のように仕切り直さなくても、スマートに間違いを訂正できます。
もといの正しい意味や使い方を知り、スムーズに会話を楽しみましょう。