ご留意の意味とは
目上の人へのメールなどでよく目にするご留意の意味を理解しておきましょう。知っておくとさまざまな場面で活用できる言葉です。
心に留めること・気をつけることなど
『留意(りゅうい)』は、「ある物事を心に留めて気を配ること」や「気をつけること」などの意味があります。それぞれ「健康に留意する」「留意事項」というように使われます。
ご留意の『ご』は、相手への敬意を表す表現「お(ご)~する」の接頭語です。 相手に対して尊敬の意を表し、ある対象のことを知っておいてくださいという依頼の意味が、丁寧に表現されている言葉となります。
ただし、『ご住所』『ご心配』などといった言葉のように単独で使用されることはあまりありません。「ご留意する」「ご留意いただく」のように、語尾をさまざまな形に変えて表現されることがほとんどです。
ご留意の使い方
ご留意に関して、相手との関係性に合わせた言い回しや、間違えやすいご注意との使い分けについて解説します。
うまく対応できるように理解しておきましょう。
相手に合わせて言い回しを変えて
留意を使った敬語表現には、尊敬語の「ご留意くださる」、謙譲語の「留意いたします」、丁寧語の「ご留意ください」など、相手や状況によりさまざまなパターンがあります。 それぞれ、留意という言葉の意味は同じですが、敬語として表すニュアンスには差異が出てきます。
また、「ご留意ください」という言い回しは、『ください』の部分が相手に何かを要求するニュアンスを含む表現です。そのため、同等の立場や目下の人には使えますが、目上の人に対して使用すると失礼だと思われる可能性があります。
上司など立場が上の人に使う場合は「~くださいますようお願い申し上げます」などと、後半の言い回しを変えるよう心掛けましょう。
ご注意との使い分けは?
間違えやすい言葉としてよく比較されるご留意とご注意は、聞き間違いも発生しやすい言葉です。 ご留意が「心を留まらせ、できるだけ気をつける」という意味であるのに対し、ご注意には「より集中し、注意を向けて気をつける」という意味があります。
つまり、それぞれの意味には、気持ちを向ける対象への距離感や強さに差があるということがいえるのです。 どちらも非常に似た意味の言葉ですが、微妙なニュアンスの差により、置き換えができないケースもあります。
例えば「子どもの飛び出しにご注意ください」は、ご留意への置き換えはできません。
ご留意のビジネスで使える例文集
敬意が込められた言葉であるご留意は、会話や文書におけるさまざまな場面で応用できます。
どのような使い方ができるのか、例文を交えて理解しましょう。
ご留意いただけますと幸いです
あることを気に留めてもらうよう、お願いしたり依頼したりする気持ちを表したい場合は、「ご留意いただけますと幸いです」という表現が使えます。
ご留意いただくという謙譲表現の後に幸いですをつけることで、相手を強く敬いつつ、より丁寧な印象を与えられます。上司や目上の人にも問題なく使える表現です。
▼使い方の例
・来月より、本社の新人研修が始まります。ご担当者におきましては、言葉遣いや身だしなみにあらためてご留意いただけますと幸いです。
・本年度から、毎週火曜日はノー残業デーとなっております。チームミーティングなどで遅くならないよう、スケジュールの管理にご留意いただけますと幸いです。
ご留意のほどお願いいたします
『~のほど』という表現には、断言するニュアンスを避け、柔らかい言い回しにする効果があります。
「ご留意のほどお願いいたします」とすれば、相手に対しより柔らかく丁寧な印象を与えられるでしょう。
▼使い方の例
・資料の作成にあたり、数字を正確に記入することと、昨年度の予算との変化を明確に表現することの2点に対し、ご留意のほどお願いいたします。
・当館の営業期間は、夏季は6~8月、冬季は12~2月となっております。なお、期間はさまざまな事情により変更になる場合がありますので、ご留意のほどお願いいたします。
ご留意いただきますようお願い申し上げます
「お願い申し上げます」で終わる表現は、そうしてもらいたい気持ちがより強く込められた言い回しになります。
目上の立場でなければ命令表現にしたいような内容を、強い敬意を示しながらお願いしたい場合に使える表現といえるでしょう。
▼使い方の例
・先日のミーティングで決定した内容に関しましては、十分ご留意いただきますようお願い申し上げます。
・質問がある場合は、質問フォームにご記入の上、ご返送いただければと存じます。なお、記入の際には以下の点にご留意いただきますようお願い申し上げます。
お体にご留意ください
目上の相手に対し健康を気遣う表現として、「お体にご留意ください」という言い回しがよく使用されます。
『お体』の部分は、『ご健康』『体調管理』に置き換えることも可能です。ご留意の前に『くれぐれも』『一段と』のような一言も添えられます。
▼使い方の例
・寒い日が続いております。どうかお体にご留意ください。
・ 猛暑の折から、ご健康にはくれぐれもご留意くださいますようお祈り申し上げます。
このような言葉を受けた際は、自分からも相手の健康を気遣うのがマナーです。
▼使い方の例
・お気遣い心から感謝申し上げます。○○様もどうかご自愛くださいませ。
留意事項という使い方もあり
留意を使った表現としては、『留意事項』や『留意点』といった言葉もあります。
「心に留め、気を配っておくべきこと」という意味です。 似た表現に『注意事項』や『注意点』という言葉もありますが、気持ちを向ける対象への距離感や強さが留意よりもより強いニュアンスを含んだ表現となります。
▼使い方の例
・本サービスを利用するにあたり、いくつか留意事項を掲載してありますので、必ずお読みいただきますようお願いいたします。
・私にとっては初めて所属する部署なのですが、業務を行う上での留意点があればお教えいただけないでしょうか。
ご留意の言い換え表現
言葉の使い方が正しいかどうか迷った際に、言い換え表現を知っていると便利です。
ご留意の類語として使える言葉と、意味の微妙な違いを紹介します。
ご承知
何かを知っておいてもらいたい場合には、『ご承知』という言葉が使えます。承知とは「事情などを分かっていること」という意味の言葉です。
「ご承知おきください」という言い回しで使用されることが多い表現ですが、敬語として使うのはふさわしくないため、目上の人には「お含みおきください」を使いましょう。
▼使い方の例
・当事務所は改修工事のため、来週より約1カ月間スタッフが不在となります。あらかじめご承知おきください。
・万が一お越しいただけない場合は、入場料の払い戻しができないことをお含みおきくださいますようお願いいたします。
ご自愛
お体にご留意くださいの言い換え表現としては、「ご自愛ください」という表現がよく使用されます。『自愛』とは「自分を愛する」、つまり自分自身の健康に気を配ることです。
相手をいたわり、体調や健康を気遣う表現として使うなら、ご留意よりも柔らかく思いやりのある印象を与えられます。 また、ご自愛くださいという場合、『お体に』や『ご健康に』といった言葉は必要ありません。
▼使い方の例
・季節の変わり目で体調を崩しやすい時期ですが、どうぞご自愛ください。
・時節柄、なにとぞご自愛のほど、心よりお祈り申し上げます。
・日々お忙しくしておられるようですが、無理なさらぬよう、ご自愛の上お過ごしくださいませ。
ご配慮
物事や他人に心を配ることを意味する『ご配慮』も、ご留意と同様の使い方ができる言葉です。 ご留意が「心に留めておく、知っておく」という意味であるのに対し、ご配慮は心遣いや気配りといった、気持ちを対象に寄り添うニュアンスを含んだ意味を持っています。
ご留意に比べ、より依頼やお願いの気持ちを強く伝えたい際に使用すると効果的です。
▼使い方の例
・館内での撮影は固くお断りしております。ご配慮ください。
・用意いたしましたサンプルには数に限りがございます。ご配慮くださいますようお願い申し上げます。
ご留意の英語表現
ビジネスシーンにおいては、ご留意を英語で表したい場合もあるでしょう。いざというときのために、会話や文書での表現方法を覚えておくと安心です。
please note that
英語のメールや書類では、「Please note~」という表現がよく出てきます。
この場合の『note』は、「~に注意する・気に留める・気づく」という意味の動詞です。 「please note that~」とすれば、「~に注意してください」という意味に直訳でき、ご留意くださいと同様の表現になります。
▼使い方の例
・Please note that the schedule can change.(期間は変更する可能性があるためご留意ください)
・ Please note that we are closed on Sundays and national holidays.(日曜日と祝日は休業となりますのでご留意ください)
keep in mind that
「keep in mind」は、「覚えておく」「心に留める」「肝に銘じる」という意味の表現です。
以下のように、noteと同じような使い方ができます。
▼使い方の例
・Please keep in mind that you need to do this within 7 days.(1週間以内にこれをする必要があることをご留意ください)
・Please keep in mind that we are going to change the deadline.(締め切りを変更いたしますのでご留意ください。)
まとめ
ご留意とは、心に留めることや気をつけることなどの意味を持つ言葉です。相手との関係性を考慮し言い回しを変えたり、間違えやすいご注意と使い分けたりする必要があります。
ご承知やご配慮など類似表現も多いため、場面に合わせて適切な言い回しを選択することがポイントです。ビジネスシーンにおいてワンランク上の表現ができるようになるでしょう。