蟠り(わだかまり)とは?
そもそも、『蟠り(わだかまり)』とはどのような言葉なのでしょうか?まずは、その成り立ちや意味について確認していきましょう。
わだかまりの語源
基本的にひらがなで書き表されることの多い『わだかまり』ですが、漢字では『蟠り』と表記します。
この『蟠り』は、蛇がグルグルととぐろを巻いたさまを表す『蟠る(わだかまる)』という言葉を語源としています。
とぐろを巻いた蛇が持つ「複雑でややこしい」「引っかかってスッキリしない」というニュアンスが、転じて『蟠り』という言葉になったと考えられているのです。
なお、『蟠』は訓読みで『わらじむし』と読みます。『わだかまり』に直接の関係はありませんが、雑学の一つとして覚えておくとよいでしょう。
わだかまりの意味
『わだかまり』の意味は、解消されずに心に留まっている不満や不信感・疑念などの重苦しい感情です。
主に、人間関係のなかで使われる言葉で、心に引っかかっているスッキリしないモヤモヤした感情について、わだかまりがあると表現するのが一般的です。
そのほか、わだかまりには「ひねくれた心」「悪意」といった意味もありますが、不満や疑念などの意味に比べるとあまり一般的ではないといえるでしょう。
わだかまりと似た意味を持つ言葉たち
わだかまりという言葉をより深く知るために、わだかまりとよく似た意味を持つ言葉についても確認しておきましょう。
おおまかなニュアンス別に2つに分けて紹介します。
物事がすっきりしない状態を表す類語
わだかまりが持つ、「物事がスッキリしないモヤモヤした状態」を表す言葉には、以下のようなものがあります。
腑に落ちない
気が晴れない
釈然としない
納得できない
合点がいかない
歯がゆい
多少のニュアンスの違いはありますが、いずれも言語化しにくい不満を表現するという点で共通する言い回しです。
心配や不安感を表す類語
わだかまりが持つ、「心配や不安感」を表す言葉には、以下のようなものがあります。
フラストレーション
ストレス
ジレンマ
懸念
しこり
禍根
いずれも、心に根深く残る不快な感情を意味する言葉です。
とくに、『しこり』や『禍根』は人間関係上のいざこざに対応する言葉という点で、わだかまりに非常に近いニュアンスを持っているといえるでしょう。
わだかまりの3つの使い方と例文
では、わだかまりという言葉はどのような場面で使われるのでしょうか?具体的な使い方を例文から見ていきましょう。
『わだかまりを残す』
(例文1)この不公平な扱いは、私の心に大きなわだかまりを残すことになるだろう
(例文2)全員で本音を言い合ったので、わだかまりが残ることはなさそうだ
『わだかまりを残す』とは、なんらかの割り切れない思いが心の中で尾を引くことや、人間関係がギクシャクして気まずい状態になることを表す言い回しです。
もやもやスッキリしない心理状態を表現する言葉なので、基本的にネガティブな場面で使われる表現といえるでしょう。
『わだかまりを解く』『わだかまりが解ける』
(例文1)落ち着いて話し合ったところ、お互いに誤解があったことがわかり、長年のわだかまりが解けた
(例文2)彼の心のわだかまりを解くには、誠実な謝罪が必要だ
『わだかまりを解く・わだかまりが解ける』とは、心に留まっていた不満や、ギクシャクした人間関係が解消されることを表す言い回しです。
心理状態や人間関係が好転することを表すポジティブな表現といえるでしょう。
『わだかまりを捨てる』
(例文1)彼ともう一度やり直すためには、心の奥にくすぶっているわだかまりを捨てる必要があるだろう
(例文2)長年のわだかまりを捨てた彼女の表情はキラキラと輝いていた
『わだかまりを捨てる』とは、心のなかの不満や疑念、葛藤などを自分の意志で消し去る、または消し去ろうと努力することを表す言い回しです。
「過去に捕われることなく前向きな自分でいよう」という決意の表れですから、非常にポジティブな表現といえるでしょう。
わだかまりを上手に解くための4つの方法
『わだかまり』について知るなかで、できれば体験したくない感情・状態だと感じた人は多いのではないでしょうか。
ここで、実際にわだかまりに苦しむような事態に陥ってしまったときのくわしい対処法についてもチェックしていきましょう。
【1】自分の非を受け止めつつ本音で向き合う
他人に対してわだかまりを感じているとき、表面上はどうあれ、心の中では誰しも「自分は悪くない、相手が悪いんだ」という思いを抱いているものです。
わだかまりが『解消されずに心に留まっている不満や不信感・疑念などの重苦しい感情』であることを考えれば、それもある意味当然のことなのかもしれません。
とはいえ、客観的に見てもそうなのかというと、それはまた別のお話です。
というのも、人間関係のなかでなにがしかのトラブルが生じるとき、その原因は双方にある場合がほとんどだからです。
人間関係のなかでわだかまりを感じたとき、まずは自分の悪かった点についてじっくり考える時間を持ちましょう。そのうえで、相手と本音で話し合ってみることです。
【2】感情的にならない
誰かに対してわだかまりを抱いているとき、心のなかは相手への不満や怒りでいっぱいになりがちです。
そうした感情を自分のなかで処理できていないまま、相手との話し合いなど関係改善へ向けたアクションを起こすのはNGと心得ましょう。
これは、ついつい感情的になってしまい、事態を悪化させるのを避けるためです。
お互いの心にある不満ややり切れなさを知り、和解するためには、まずお互いの心情を冷静に理解し合わなければなりません。
そのためには、感情的な言動やふるまいは逆効果でしかないのです。
苦しいわだかまりから一刻も早く自由になるためにも、自分の感情から一歩距離を取り、落ち着いた話し合いを持つようにしましょう。
【3】素直に謝る
わだかまりをスムーズに解消する方法の一つが、素直に謝ることです。
相手に対する不満や疑念などのモヤモヤした感情が解消されないことで生じるものですから、まずは相手のモヤモヤを解消することに焦点を当てるのが、わだかまりを解くための近道なのです。
素直な謝罪によってあなたから折れてしまえば、相手は出鼻をくじかれて、いつの間にかあなたに対するわだかまりも消え失せているでしょう。
自分のプライドや体裁を守るよりも、相手との関係を良好に保つことを優先する、まさに『名を捨てて実を取る』作戦です。
【4】普段どおりに笑顔で接する
普段どおりに笑顔で接するのも、わだかまりを上手に解くための非常に効果的な方法です。
誰かにわだかまりを感じているとき、相手への複雑な心情でどう対応していいかわからなくなってしまう人は多いでしょう。
そんなとき、気持ちをそのまま態度に出したふるまいをしてしまえば、相手のあなたに対する印象はガタ落ちです。まして、相手もあなた同様にわだかまりを感じていた場合、修復不可能な状態にならないとも限りません。
「相手とのわだかまりを解きたい」という思いがあるのなら、少なくとも相手に敵意や悪意を見せるような言動は避ける必要があります。
まるで何も思うところなどないかのような、いつもと変わらない笑顔での対応がベストといえるでしょう。
わだかまり解消後に起こり得る関係性の変化
では、実際にわだかまりが解消した人のあいだにはどんな関係性の変化が起こり得るのでしょうか?
具体的な例を二つ見ていきましょう。
本音を言い合える
わだかまりを解く過程では、腹を割った話し合いや謝罪など、関係の改善に向けてお互いの本音をぶつけ合い、すり合わせていくといったステップが必要です。
通常の人間関係のなかでは見せることのないような深い部分を見せ合うのですから、わだかまりが解けた暁には、お互いがお互いにとっての大切な理解者になっているのは想像に難くありません。
いったん心を開き合った安心感もあって、本音を言い合える、貴重な存在になるでしょう。
お互いの考え方をより理解できる
わだかまりは、そもそも相手に対するマイナス感情を直接には伝えることができず、胸に秘めることで大きく育ってしまうものです。
どちらか一方がわだかまりを感じたとき、相手側もなんらかのわだかまりやマイナス感情を抱いていることが多く、これもお互いへの理解を阻む要因の一つといえるでしょう。
その点、わだかまりを解消した間柄というのは、その過程での衝突や話し合いによって、すでにお互いの性格や考え方の違いをしっかりと理解できています。
特に、お互いの怒りポイントやコンプレックスといったネガティブな面にくわしくなることから、相手を傷つけない・怒らせないふるまいが自然とできるようになるでしょう。
お互いの考えを阿吽の呼吸で察することができる、大切な理解者となるはずです。
まとめ
『わだかまり』とは、解消されずに心に留まっている不満や不信感、疑念などの重苦しい感情を意味する言葉です。
人間関係のいざこざや納得できない思いなどを表すときに使われることが多いため、ネガティブな印象の強い言葉といえるでしょう。
とはいえ、視野を広げてみると、わだかまりにはポジティブな側面もあることに気付きます。
『わだかまりを解く』『わだかまりを捨てる』といった言葉で表現されるように、わだかまりを乗り越えた暁には相手への深い理解や信頼関係が待っているからです。
『わだかまり』についてくわしく知ることで、よりよい人間関係を築いてゆくためのヒントにしていきましょう。