出会いはSNSのメッセージ
「はじめまして。突然のメッセージで申し訳ありません。玲奈さんのプロフィールを見ていたら、映画の話をしてみたいなと思ってメッセージを送ってしまいました。もしよかったら、連絡ください。」
どうせ何かのセールスか、出会い系のお誘いだろうと思って見たメッセージが、思っていたより丁寧な口調でビックリ。スルーするつもりでいたのに、何と返信したらいいだろう……と迷っている自分がいた。
『彼氏もいないし、ネットで話をするだけならいいかな?』
そんな軽い気持ちでメッセージを返した玲奈は、久しぶりに胸がドキドキしていることに気が付いた。
ミニシアターで初デート
大学時代、映画サークルに入っていた玲奈は、映画が大好き。社会人になってからも、どんなに忙しくても週に3本の映画を観ては、SNSの映画レビューに残していたのだった。
SNSにメッセージを送ってきた大手メーカー勤務の涼太は、玲奈の書いた映画レビューから辿ってきたという。プロフィールを見ると、偶然にも同じ大学出身。二人の距離はぐっと縮まった。
「この映画の○○の演技がさ……」
「○○監督らしくていいよね」
「このセリフが好き」
何よりも魅力的だったのは、まるで学生時代に戻ったようにディープな話ができること。メッセージが一往復するたびに、彼への気持ちが高まっていった。
「週末に渋谷の○○で公開された映画を観に行くんだけど、一緒にどう?」
「私も観に行くつもりだった!」
「俺たち気が合うね」
もちろんミニシアターで初デートを終えたあとも、涼太のことが気になってしかたなかった。イメージ通りのルックスと、優しい口調。まだ出会って1週間足らずなのに、確実に恋に落ちていた。
『ネット恋愛も悪くない』
まだこのときは、幸せな気持ちに包まれていた。
彼の部屋で見つけた嘘
「俺のこと、どのくらい好き?」
交際がスタートしてから間もなく、ベッドの中で涼太に聞かれて戸惑った。
「どんな映画よりも好きよ」
そんな玲奈らしい答えを聞いてほっとした涼太は、深い眠りについてしまった。
『このまま結婚するのもアリかな』
隣に眠る彼の横顔を見ながら部屋を眺めていると、ベッドの下に何か隠れているのが見えた。それは卒業アルバムだった。
でも、どんなにページを捲っていても、涼太の名前も写真も見当たらない。一体どういうこと……?
「ねぇ、涼太はどこにいるの?」
ビクっとした様子で目を覚ました涼太は、玲奈をじーっと見つめて重たい口を開いた。
「俺はこれだよ」
指さす写真を見ても、まったくピンとこない。そして涼太ではなく、『圭太』という名前だった。
ルックスにコンプレックを抱えていて、ずっといじめに遭っていた圭太は、学生時代に整形をして別人に生まれ変わったという。
「ごめんなさい」
SNSのプロフィールはすべてウソ。年齢も出身大学も、就職先も。自分に自信のない圭太は、彼が作り上げた理想の男『涼太』になりきって、恋愛していたのだ。
初めから本性を見せてくれたら、結婚だってあったかもしれないのに……。
リアルな世界のように横のつながりの見えないネット恋愛は、やっぱりリスクが大きい。玲奈はしばらく男性不振に陥ってしまったのだった。
Editor:mook
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