「お見知りおき」の意味
初対面の挨拶などでよく使われるお見知りおきという表現は、どのような意味を持つ言葉なのでしょうか。詳しく理解しておきましょう。
自分のことを心に留めておいてほしい
お見知りおきは『お見知り置き』とも書き、『お』『見知り』『置き』の3語で構成されています。
『お』は敬語の接頭語、『見知り』はすでに面識があり知っているという意味の動詞『見知る』、『置き』は何かをその場に留めておくという意味の動詞『置く』です。
つまり、誰かに対し『お見知りおきください』と言う場合は、名前や顔など自分のことを、今後も心に留めておいてほしいという意味の表現になります。
相手を敬う気持ちも込められた尊敬語であるため、ビジネスシーンやプライベートの場において、主に目上の人や上司への挨拶などに使われるフレーズです。
「お見知りおきください」の使い方
自己紹介の場面や部下を他人に紹介する場面などで、お見知りおきは多く使用されます。例文も交えながら具体的な使い方を確認しましょう。
初対面の人へ挨拶をする場合
ビジネスでの名刺交換時や、人が大勢集まるようなシーンなど、お見知りおきは初めて会った人に自己紹介の挨拶をする場面で最も多く使われます。
▼使い方の例
・はじめまして、○○と申します。どうかお見知りおきください。
今後深い関わりになりそうな相手なら、「以後お見知りおきを」のように細かく表現を変えるとよいでしょう。
また、尊敬表現であるため、主に自分より立場・地位が高い人や、取引先・顧客といった相手に対して使用します。
一方で、相手に対し「これからも心に留めておきます」という意味では使用できません。「今後ともお見知りおき申し上げます」などという表現は間違いです。
お見知りおきを使用した挨拶に対しては、お見知りおきを返さずに「こちらこそよろしくお願いします」などと返答するようにしましょう。
他者を紹介する場合
部下など目下の立場にある者を、自分より目上の相手に紹介する際にも、お見知りおきが使えます。
▼使い方の例
・彼は今年の4月に入社した新人社員の○○君です。以後、お見知りおきの程よろしくお願いします。
ただし、自分の上司を取引先の重役などに紹介する場合は、このような表現はふさわしくないでしょう。紹介できる人物の立場は、同僚までが限度と考えます。
基本的に、話す相手は自分より目上、紹介する人物は自分より目下と覚えておけば、相手に対し失礼にあたることはありません。
会いたいという希望を伝える場合
まだ会ったことのない人に対し、本人やその人の知人などへ会いたいことを伝える際に、以下のような表現ができます。
▼使い方の例
・○○様に関しましては、まだお見知りおき頂きたいと存じます。是非一度ご紹介頂ければと思っております。
江戸時代を描いた物語の中にも、まだ会ったことがない人に会いたいという意味で、お見知りおきを使用した以下のような表現が見られます。
▼使い方の例
・かような折ならでは、お見知りおき願うことのかなわぬお方々、せっかくのお招きなれば、行って御挨拶申してまいるがよい(茶道太閤記/海音寺潮五郎)
■類語や言い換え表現も
『見知り置く』に似た意味の言葉としては、見覚える・胸に刻む・心に留める・記憶する・肝に銘じるなどがあります。
▼使い方の例
・初めてお目にかかります。今後もお記憶に留めて頂ければ光栄です。
また、長く関係が続きそうな相手に対する言い換え表現としては、以下のような文が挙げられます。
▼使い方の例
・今後も何卒よろしくお引き回しのほどをお願い申し上げます。
・今後ともお付き合いのほどをよろしくお願いいたします。
初対面となる目上の人が相手なら、次のようにシンプルな言い換えでもよいでしょう。
▼使い方の例
・お初にお目にかかります。
・どうぞよろしくお願いいたします。
・お会いできてこの上なくうれしいです。
似ている「お見知りおきください」「お知りおきください」に注意!
お見知りおきくださいと似ている『お知りおきください』は、意味が異なる表現です。使い方や例文、類語をチェックしましょう。
「お知りおきください」は、情報を覚えておいてほしいときに使う
お知りおきくださいは、「今後も覚えておいてください」「頭の片隅に置いておいてください」という意味で使われる敬語表現です。
お見知りおきくださいが「人に関する情報を覚えておいてほしい」という意味であるのに対し、お知りおきくださいの場合は、あらゆる情報が覚えておいてほしいことの対象になります。
さまざまな使い方をされる言い回しであり、前もって知っておいてほしいことや、今後も覚えておいてほしいことがある場合によく使われます。
また、不特定多数の人たちに向けて、重要な情報を同じタイミングで周知させたい際に使用されることが多いという特徴もある表現です。
そのため、社内の同報や地域の回覧板など、一度に多くの人が目にするような文書で多く使用されます。
■例文や類語もチェック
お知りおきくださいの例文を確認しておきましょう。
▼使い方の例
・参加を希望する場合は、このハガキが参加許可証となることをお知りおきください。
・エレベーターの使用ができない時間帯は、階段のみ利用可能であることをお知りおきください。
・本日から約1カ月間、出張のため不在にすることが多くなると思いますので、その点お知りおきください。
また、類語として「ご承知おきください」「お含みおきください」「ご了承ください」という表現もあります。
ご承知おきくださいは、お知りおきくださいと同様、情報を記憶に留めておいてもらいたい際に使います。
お含みおきくださいは、記憶するだけでなく『理解する』『納得する』という意味を含みます。
ご了承くださいは、理解・納得することを強要するニュアンスが含まれる表現です。
初対面の人への挨拶で気を付けること
お見知りおきがよく使われる、初対面の人への挨拶は、社会人に欠かせない重要な儀式といえるでしょう。自己紹介で好感を持ってもらうために注意すべきポイントを紹介します。
聞き取りやすいスピードを心がける
自己紹介をする際は、聞き取りやすいスピードで、語尾まではっきりと話すように意識しましょう。
特に、緊張しやすい人は自然と早口になりがちです。「少しゆっくりしゃべり過ぎているかな?」と思うくらいが、ちょうどよいスピードである場合が多いものです。
また、口元でぼそぼそとした声では、スピードがゆっくりでも聞き取りにくくなります。
普段から声が小さい人は、自分でも少し大げさに感じるくらいの、明るくはきはきとした声を出すようにしましょう。
表情や姿勢にも注意
初対面の相手に対しては、自分に関する情報をしっかりと伝えること以上に、見た目で好印象を与えることがとても重要です。
身なりなど事前に準備できることをしっかりと整えると同時に、その場で勝負が決まってしまうような表情や姿勢などにも注意を配りましょう。
特に、表情は相手の心を動かしやすく、好意を伝えやすい要素です。多少無理矢理にでも表情筋を動かし、微笑む程度に笑顔を作りましょう。
姿勢に関しても、足を揃えて背筋を伸ばし、頭の先から足の裏まで一本の線が通ったようなイメージを持ちます。肩の力を抜いて真っ直ぐに相手を見れば、すっとしたよい姿勢が保てます。
簡潔に自己紹介をする
無駄に長い自己紹介は、相手の反応にかかわらず、悪い印象を与えやすいと心得ましょう。伝えたいことがたくさんあっても、簡潔にまとめるのが好印象です。
▼自己紹介の例
・本日よりお世話になる○○と申します。企画部からこちらの営業部へ異動になりました。営業は経験がほとんどなく、ご迷惑をお掛けすることもあるかと思いますが、精一杯頑張りますのでよろしくお願いします。
・お初にお目にかかります。株式会社△△の○○と申します。学生時代はラグビー部のマネージャーを務め、チームが花園に出場した経験があります。皆様のお役に立てるよう日々の業務にもコツコツと取り組んでまいりたいと考えております。今後ともよろしくお願い申し上げます。
まとめ
お見知りおきは、初対面の人へ自己紹介をする際の挨拶などによく用いられる尊敬表現です。部下などを目上の人に紹介するシーンなどでも使われます。
初対面の人への挨拶では、話すスピードや姿勢などに注意し、相手に好印象を与えられるような自己紹介ができるようになりましょう。