お手間を取らせてしまいの意味
ビジネスや仕事においては、自分の都合で相手に作業や確認を依頼することが多く発生します。
そんな時に、『お手間を取らせてしまい』を一言添えるだけで、相手の気分を害することなく、物事をスムーズに進めることができるでしょう。
時間や労力を割いてもらう
日本語には、相手の立場や状況を考慮した配慮のある表現が数多く存在します。お手間を取らせてしまいは、相手が自分のために力を尽くしてくれたときに、お詫びや感謝の意味を込めて用いられる言葉です。
『手間』は、仕事を仕上げるのにかかる時間や労力のことですが、その労力や時間の大小は問題ではありません。
迷惑をかけて申し訳ないという自分の気持ちを伝え、相手の心情に寄り添うための言い回しといえるでしょう。
お手間を取らせてしまいの使い方
ビジネスシーンにおいては依頼や謝罪の際に使われます。こちらの誠意や気持ちが伝わるような表現を心がけましょう。
謝罪・感謝をするとき
「ありがとう」や 「申し訳ない」などの謝罪や感謝の言葉を伴うのが一般的です。
自分の都合で相手に何かをお願いし、無事に事が済んだときは以下のように表現すると相手に好印象を与えます。
▼使い方の例
・お手間を取らせてしまい申し訳ございませんでした。(謝罪)
・お手間を取らせてしまいましたが、おかげ様で無事に完成いたしました。ありがとうございました。(感謝)
「お手間を取らせてしまいましたが、失敗してしまいました」というふうに、望む結果が得られなかった際の報告として用いることはほとんどないでしょう。
お願いをするとき
相手が忙しいのにもかかわらず、自分の都合で何かをお願いしたいときは「お手間を取らせてしまい申し訳ありませんが…」と添えた後に用件を述べるのがマナーです。
ストレートにお願いすると不躾な印象になりがちですが、ワンクッション入ると 相手に負担をかけてしまう心苦しさを伝えられます。
▼使い方の例
・みなさまにはお手間を取らせてしまいますが、ご理解のほどよろしくお願いいたします。
上司に使える敬語?
お手間は『手間』に丁寧語の接頭語『お』を付けることで、相手への敬意を示しています。目上の人や大切な顧客にこそ使える敬語表現といえるでしょう。 自分と同格や部下などの相手には、接頭語の『お』を取り「手間を取らせてしまい…」で構いません。
また、 目上の人に対しては、お手間を取らせてしまいの後に続く言葉選びも重要です。 「お手間を取らせてしまいすいません」と言えば、ビジネスシーンにあまり相応しくない丁寧さに欠けた表現となり、相手に謝罪の気持ちが伝わらないでしょう。
とらせる・かけるの違い
手間を取らせるは、『相手』が時間や労力を費やしたときに使う表現なのに対し、手間をかけるは『自分』が費やした場合に用います。
よって、ときどき耳にする「(相手に対し)手間をかけてしまいすみません」という言い方は誤用であることがわかります。
なお、相手が面倒なことに労力を費やしてくれた際は『手数をかける』が使えます。ビジネスシーンでは手間と手数を混同しないようにしましょう。
お手間を取らせてしまいの例文
ビジネスシーンで頻繁に登場する言い回しは例文ごと覚えておきましょう。特に、クッション言葉は、口からスムーズに出るようにしておきたいものです。
お手間を取らせてしまい申し訳ありません
自分のことで、相手に労力や時間を使わせてしまった場合に使う謝罪の表現です。 取引先や目上の人に対しては大した手間を取らせていないときでも「お手間を…」と添えたほうが、物事が円滑に進むでしょう。
相手に迷惑や面倒をかけ、深く謝罪する際も使える言い回しです。
▼使い方の例
・以上が商品の特徴です。お忙しいところお手間を取らせてしまい申し訳ありませんでした。ぜひご検討をよろしくお願いいたします。
・お手間を取らせてしまい、誠に申し訳ありません。今後は対策を徹底し、社内全体で再発防止に取り組んでまいります。
お手間を取らせてしまい恐縮ですが
自分の都合で、相手にお願いをするときのクッション言葉として使える表現です。
「恐縮ですが」は「すみませんが」「お手数ですが」よりもさらにへりくだった丁寧な言葉であるため、取引先の顧客や社内の目上の人に対して使うのに適しています。
▼使い方の例
・企画書を修正いたしました。お手間を取らせてしまい恐縮ですが、再度お目通しいただきますようお願い申し上げます。
・お手間を取らせてしまい誠に恐縮ですが、必要事項を記入の上、ご返送いただけますでしょうか。
お手間を取らせてしまいの類語
会話やメールの中で同じ言葉を繰り返していませんか?場面や相手を見ながら言い回しを変えてみましょう。
お手数をおかけしてしまい
『手数(てすう)』は、『ある物事を達成するために必要な労力そのもの』を意味します。
とりわけ、作業が面倒で困難なニュアンスが強く、自分の要求や依頼に対して誰かが作業をしてくれた際、謝罪や感謝の意を込めて使います。作業工程が多い場合は、手間よりも手数を使うのが適当でしょう。
▼使い方の例
・この度はデザイン変更の件でお手数をおかけしてしまい、誠に申し訳ございませんでした。
・お手数をおかけして恐縮ですが、会議の資料を郵送していただけませんでしょうか。
お手を煩わせてしまい
『煩う(わずらう)』には悩む・心配する・苦労するの意味があり、労力や時間の意味で使われる『手間』よりも、 『精神面』での負担や面倒をかけるニュアンスが強めです。
相手への依頼や謝罪の際に「申し訳ない」という気持ちを表すへりくだった表現といえるでしょう。
▼使い方の例
・私の確認不足により皆様のお手を煩わせてしまい、深く反省をしております。申し訳ございませんでした。
・お手を煩わせてしまい恐縮ですが、金額の再検討をお願いできませんでしょうか?
ご足労いただき
『足労(そくろう)』には、足を使って移動する『労力』や『疲れ』という意味があります。『ご(お)~いただき』は「〇〇してもらう」の意味で、自分をへりくだって相手を敬う謙譲表現です。
ご足労いただきには「本来自分が出向くべきところを、わざわざ来てもらって…」というニュアンスが含まれており、謝罪や感謝の言葉を伴うケースが多いでしょう。
足を運んでもらうときは「ご足労をおかけしますが…」と一言添えると印象がよくなります。
▼使い方の例
・(相手を会社に迎えて)ご足労いただきありがとうございます。
・(メールや手紙で)展示会の折には、ご足労いただきまして誠に感謝しております。
・(顧客に対し)更新手続きが必要です。ご足労をおかけしますが、今週中に来店いただきますようお願い申し上げます。
ご負担をおかけして
ご負担をおかけしては、相手に面倒をかけたときはもちろん、金銭的な援助をお願いするときにも使用できる表現です。
▼使い方の例
・交通費は実費となります。ご負担をおかけして恐縮ですが、ご理解のほどよろしくお願いいたします。
・ご多忙の折、ご負担をおかけして申し訳ございませんが、もう一度ご検討いただけませんでしょうか。
まとめ
お手間を取らせてしまいは、相手の事情や心情に配慮する言葉で、人間関係を円滑にする効果が期待できます。 クッション言葉として用いれば、印象がやわらかくなり、相手の理解が得られやすいはずです。
さまざまな類語があるため、微妙なニュアンスの違いを理解して適切に使いましょう。