ビジネスでの気持ちの伝え方
職場で誰かに助けてもらったときやほめられたとき、感謝とともに嬉しさを上手に伝えられると良好な関係を築けるでしょう。
しかし、ビジネスシーンでは素直に「嬉しいです!」と答えるよりもふさわしい気持ちの伝え方があります。礼儀正しい女性としてアピールするには、感情の伝え方も工夫することが大切です。
職場や改まった席などで嬉しいですと表現する場合の印象と、ほかの敬語表現を紹介します。
嬉しいですは敬語だが不適切
嬉しいですの『です』は断定の助動詞『だ』を丁寧にしたものです。
文法的には、ですの前には名詞などの『体言』がくるのが正しい日本語でしょう。
・あなたに会えてとても嬉しいだ
ですをだに置き換えたとき、だの前には名詞の『気持ち』などが入っていないと不自然です。『嬉しい』は感情を表す形容詞で、厳密には誤った日本語だとする説もあります。
しかし、現在は『嬉しいです』も一般的な敬語表現の一つとして通用するでしょう。職場でも休憩中や食事の席、近しい同僚・先輩と話すときは問題ありません。
ただ、ビジネスシーンにはふさわしくない表現とされています。挨拶状やメール、立場の高い上司に嬉しい気持ちを伝える場合は、もう少し敬意を込めた表現を選びましょう。
嬉しく存じます
ビジネスシーンでは嬉しい気持ちを伝える際にも、自分をへりくだり相手を立てる謙譲語の表現を使いましょう。
自分の感情を謙譲語で表現するときは『存じます』が適切です。
▼使い方の例
・おほめにあずかり大変嬉しく存じます。
・次回のプロジェクトでもご指導いただけたら嬉しく存じます。
『存じる』は『思う』の謙譲語です。ますを付けて、目上の人に使うが一般的でしょう。
少し固く聞こえるかもしれませんが、シンプルで無難な表現です。 ほかの気持ちを表現するときにも使える敬語のため覚えておきましょう。
▼使い方の例
・この度はご意向に沿うことができず大変申し訳なく存じます。
嬉しい限りです、喜ばしい限りです
嬉しいですは、正しい日本語ではないものの、率直に喜びの気持ちが伝わる表現です。
ニュアンスを保ったまま、正しい敬語の表現をするときは『嬉しい』と『です』の間に『その気持ちで満たされている』という意味で『限り』を付け加えるとよいでしょう。
▼使い方の例
・○○さんにアドバイスいただけて嬉しい限りです。
限りは『限界』という意味です。嬉しいを『喜ばしい』と表現するのも、嬉しさを共有したい・知らせたいという気持ちが伝わります。
自分のことにも使えますが、相手の成功や昇進を祝うような場面で使うとより嬉しさが伝わるでしょう。
▼使い方の例
・○○課長の下で働けるのは喜ばしい限りです。
・今回の提案が△△様のお気に召して大変喜ばしい限りです。
ほかの言葉に言い換えられる?
毎回、同じ言葉で感情を表現していると「心がこもっていない」と捉えられることもあります。特に、喜びに関しては表現力が如実に出るでしょう。言葉の引き出しが多い女性は、魅力的に見えます。
メールなどで同じ表現を何度も使うのは避けたいものです。嬉しさを表現するには、ほかにどのような言葉が合うのでしょうか?
幸いに存じます
『幸い』は幸せの改まった言い方です。ビジネスメールなどで、嬉しい・ありがたいといった意味で使うと敬意のこもった表現になります。
▼使い方の例
・お忙しい中恐縮ですが、○日までにご返信いただけると幸いに存じます。
・弊社の提案についてもご検討いただけると幸いに存じます
『幸いに存じます』は固い表現に聞こえますが、お客様や上司など目上の人に喜ばれたとき・感謝をされたときにもふさわしい表現です。
▼使い方の例
・私からの出産祝いの品がお役に立ったと伺いまして大変幸いに存じます。
・また、弊社のサービスをご利用いただけますと幸いに存じます。
幸甚に存じます
『幸甚』は『こうじん』と読みます。『甚』は『大変』『非常に』といった意味で『幸甚に存じます』は嬉しい気持ちを最大限丁寧かつ思いきり表現した言い方です。
挨拶状・礼状などに使われる言葉ですが、ビジネスシーンでも使えます。
▼使い方の例
・このような素晴らしいプロジェクトに参加できたことは、弊社にとって誠に幸甚に存じます。
・もし、私どもの商品が○○様のお目にかないましたら幸甚に存じます。
近しい関係の人に使うには、不適切ではないものの少し固い表現です。上司に使う際は相手を選びましょう。
職場で指導を受けている課長や部長などよりは、役員クラスに使うのが適当です。
光栄に存じます
上司や取引先などにほめられたときや仕事を認められたときの返答には『光栄に存じます』がよいでしょう。
嬉しい気持ちもですが『誇りに思う気持ち』がよく伝わる言い方です。
▼使い方の例
・御社と今後お取引させていただけることを大変光栄に存じます
・この度は部長にお引き立ていただき誠に光栄に存じます。
『光栄』自体に「あなたに評価していただいて名誉に思う」と相手を尊敬する気持ちが込められています。敬語表現の中でも言われた相手が気をよくする言葉の一つと言えるかもしれません。
『光栄です』には、尊敬表現は含まれないため『光栄でございます』か光栄に存じますと丁寧な表現にします。
職場で上司に何かしてもらったときは、積極的に使いましょう。
何かをしてもらったときに使える言葉
先輩や同僚など、改まった表現を使うほど目上の相手ではなくても、礼儀正しく嬉しさを伝えたいときはどのような言葉がふさわしいのでしょうか?
ビジネスシーンで嬉しいことや助けてもらうことがあった場合に使える言葉を紹介します。
ありがたい
ありがとうを形容詞にすると『ありがたい』になります。
先輩や同僚に思いがけない嬉しい言葉や助けをもらった際に使うのにぴったりの表現です。
▼使い方の例
・そんな風に言ってもらえてありがたい限りです。今後ともよろしくお願いします。
さらに、感謝の気持ちを言葉にすることでより気持ちが伝わるでしょう。
▼使い方の例
・先輩にご協力いただけて、本当にありがたかったです。感謝の気持ちでいっぱいです。
大変助かりました
仕事で直接的にアドバイスや協力を得られた場合『助かった』と表現するのもよいでしょう。
「誰かの役に立った」という実感がやりがいにつながります。
▼使い方の例
・○○さんがまとめた資料、とてもわかりやすかったです。大変助かりました。
助かりましたと伝えるときは、程度を表す『大変』やクッション言葉『おかげさまで』があると、より感謝の気持ちが伝わるでしょう。
▼使い方の例
・先日はご相談に乗っていただけて大変助かりました。おかげさまで前向きに取り組めました。
助かりますは『助かる』の丁寧語です。です・ますのように丁寧な口調ではありますが、尊敬表現は含まれていません。
目上の人に使うのは失礼にあたるため、同僚や立場が下の人に使いましょう。
まとめ
嬉しいですは敬語として浸透しているものの、カジュアル過ぎたり厳密には正しい日本語ではなかったりする一面もあります。ビジネスシーンではほかの言い方がおすすめです。
ただ、自分の存在や行動を「嬉しい」と伝えられて嫌な気持ちになる人はいません。言われたほうも明るい気持ちになるような前向きな感情の伝え方のため、お礼や具体的な理由も加えて積極的に表現しましょう。