謹白の読みや意味
『謹白』は『きんぱく』と読みます。イントネーションは異なりますが、『緊迫』や『金箔』と同じ読み方です。
以下、言葉の意味を詳しく解説します。
つつしんで申しのべること
謹白という言葉には、『謹む(つつしむ)』という語が含まれています。つつしむとは、「かしこまって相手へ敬意を示すこと」です。
「謹んでお悔やみ申し上げます」「謹んで新年をお祝いいたします」など、相手に敬意を表明する挨拶などでよく使われます。
一方、『白』という字に色を表す意味はなく、ここでは『言う』の謙譲語『申し上げる』と同じ意味で使われています。
つまり、謹白は 「つつしんで申しのべること」という意味の言葉です。かしこまったビジネス文書や格上の相手に向けた手紙などに使用されます。
手紙や文書の結語
形式ばった手紙や文書では、メインとなる文章の前後に『頭語』『結語』とよばれる言葉が書かれることが多くあります。
頭語は書き出しの挨拶に使われる言葉です。『拝啓(はいけい)』『急啓(きゅうけい)』『前略(ぜんりゃく)』などがあります。
結語は結びの挨拶に使われる言葉です。『敬具(けいぐ)』『謹言(きんげん)』などがあり、謹白も結語の一つです。
なお、頭語と結語には、女性しか使えないとされている言葉があります。 頭語の『一筆申し上げます』や『謹んで申し上げます』、結語の『かしこ』が該当し、堅苦しい文章の中でも女性らしさを表現できる言い回しとして使えます。
謹白の正しい使い方
頭語や結語は、言葉の持つ意味を理解することより、手紙や文書内で正確に使えることのほうが重要です。謹白の正しい使い方を理解しましょう。
頭後の謹啓と一緒に使う
基本的に、頭語と結語はセットで使います。どちらか一方だけしか書かない構成は、フォーマルな文書においてはマナー違反です。
また、頭語と結語は、それぞれ一緒に使う組み合わせが決まっています。手紙の種類をグループ分けし、それぞれで使える数個の頭語と結語があります。
代表的な頭語と結語の組み合わせは以下の通りです。
▼組み合わせの例
・拝啓と敬具(一般的な手紙)
・謹啓と謹言(あらたまった手紙)
・急啓と草々(急ぎの手紙)
・前略と草々(前文を省いた手紙)
・拝復と敬具(返信の手紙)
謹白は、 謹啓に対応した結語です。謹言と謹白に意味の違いはほとんどなく、どちらも謹啓の結語としてよく使われています。
あらたまった手紙の頭語として使われる言葉には、他にも『謹呈(きんてい)』などがあり、謹言や謹白とセットでよく使用される言葉です。
謹啓と謹白の位置
謹啓は、タイトルから1行空け、前文の先頭に記します。
その後、1文字分のスペースを空け、時候の挨拶を綴ったあと、本文を書き始めていきましょう。 謹白は、末文から1行下の行に、右寄せで記します。
以下、例文で確認しましょう。
▼例文
目上の人に使用可能
謹啓や謹白は、謹という語句が使われていることからもわかるように、 相手に対して非常に高い敬意を表す言葉です。
したがって、相手の立場が目上であればあるほど、使用するにふさわしい表現であるといえます。 しばらく会っていないような恩師や、退職して疎遠になった昔の上司、取引先の経営者などに、手紙や文書を出す際に用いるとよいでしょう。
なお、謹啓は、かつて朝廷や官庁に差し出す文書が漢文のみで書かれていた時代の名残です。
上表文と呼ばれる君主や上司に宛てて提出する文書の体裁にならい、謹啓という書き出しが定型化したものといわれています。
謹白を使う場面
ビジネス文書としては、これまで付き合いがなかった企業と初めて契約を結ぼうとしている場合に、経営者や重役宛に差し出す丁寧な依頼文などで使えます。 重大なトラブルを起こしてしまい、相手に多大な迷惑をかけた際のお詫び状でも、最大限の敬意と謝意を含めた言葉として使用できるでしょう。
個人が法人を設立する際や、本社・支社を移転する際に、関係先へ出す案内状でもよく使われる言葉です。
他にも、幹部の人事異動に関するお知らせや、地位が高い人への各種招待状などに用いられます。
謹白と敬具・敬白の違いは?
頭語と結語には多くの種類があり、組み合わせ方もさまざまです。
代表的な二つの結語を紹介し、それぞれどのような使い方をすればよいのかを解説します。
敬具
前述したように、頭語と結語の組み合わせを考える場合は、手紙の種類を考慮する必要があります。 謹啓や謹白があらたまった内容の手紙に使われるのに対し、 拝啓や敬具は一般的な内容の手紙で使われる言葉です。
拝啓・敬具ともに、敬意のこもった敬語ではありますが、謹啓や謹白に比べると敬意は弱くなります。 そのため、普段から付き合いがあるような取引先などの幅広い相手に対し、見積りの提出や催し物の案内など、さまざまなシーンで使用できるでしょう。
一般的な手紙で使える頭語には、拝啓のほかに『拝呈(はいてい)』『啓上(けいじょう)』などがあり、結語には敬具の他に『拝具(はいぐ)』などがあります。
敬白
結語の一つである『敬白(けいはく)』は、拝啓と謹啓の両方に対応できるとされているため、扱いがとても難しい言葉です。 敬具と共に拝啓の結語として問題なく使えるという解釈もあれば、拝啓のパートナーとしては敬意が弱いため謹啓と使うべきだという解釈もあります。
かつては拝啓の結語として使われることが多かったようですが、現在は謹啓の結語としてもよく用いられており、はっきりとした結論が出されていないのが現状です。
使い方に迷う場合は、拝啓・敬具や謹啓・謹言など定番の組み合わせを使うのが無難だといえるでしょう。
謹白をメールや文書で書く際のポイント
形式ばったメールや文書には、基本となる構成や形式があります。内容が大事であることはもちろんですが、マナーを身につけることも重要です。
基本的な構成
フォーマルな手紙の構成は、おおむね以下のように決まっています。
▼構成例
- ・頭語
- ・前文(ぜんぶん)
- ・主文(しゅぶん)
- ・末文(まつぶん)
- ・結語
- ・後付(あとづけ)
- ・追伸(ついしん)
横書きの文書であれば、それぞれ上から順番に、適宜改行するなど見やすさも考慮しながら書いていきましょう。
前文・主文などの内容
頭語・結語以外に手紙を構成する要素の内容を確認しましょう。
- 前文:時候の挨拶や相手の健康・近況を案じる言葉などを記す部分です。あくまでも挨拶文であるため、主たる内容には触れないようにしましょう。
- 主文:文書のメインテーマを書く部分です。伝えたいことを分かりやすく書きましょう。書き出しに「さて、~」を入れると、前文との境が分かりやすくなります。
- 末文:手紙を締めくくる部分です。相手の健康を祈る言葉や今後のお付き合いを願う言葉を書き、結語につなげます。主文の要点や返信依頼などを書いても構いません。
- 後付:手紙が「いつ・誰が・誰に」送られたのかということを記す部分です。それぞれ、『日付』『署名』『宛名』に分けて書きます。
- 追伸:手紙を書き終えた後に思い出したような内容を書き記す部分です。目上の相手には失礼にあたるとされているため、無理に書く必要はありません。
まとめ
謹白とは、あらたまった手紙の結語として使われる言葉です。一般的には、頭後の謹啓と一緒に使用されます。 頭語と結語は、謹白以外にも数多くの種類があります。
正しい手紙の書き方をマスターし、目上の人や取引先へ文書を書く際に役立てましょう。