お待ちしておりますの意味
多くの人が何気なく使っているであろうお待ちしておりますという表現は、待つという単純な行為に、いくつかの微妙なニュアンスが含まれていることを表す言葉です。
正しい意味を理解することで、よりきめの細かい敬語表現ができるようになるでしょう。
待っているの謙譲語
『待つ』という言葉の意味は「物事や人が自分の元に来るまで時を過ごす」ことです。ビジネスシーンでは、人だけでなく、メールや書類などの到着を待つことも多いでしょう。
お待ちしておりますは、待つことを継続する状態を表す言葉『待っている』の謙譲表現であり、相手に対しへりくだったニュアンスを持つ言葉です。
また、単に待っているというより、何かが来ることを『願っている』という意味合いを強く含んだ表現ともいえます。『~しております』という言い回しにより、待つ行為を『継続する』ことも強調しています。
お待ちしてますよりも丁寧な表現
お待ちしておりますは、動詞の待つに謙譲語の『お~する』と丁寧語の『おります』を組み合わせた言葉です。 元の言葉となる謙譲表現『お待ちしてます』を、より丁寧な言い回しにした言葉であることが分かります。
なお、相手が何かを待っている状態を敬語表現で表す場合は、尊敬語の『お~になる』を使用して「お待ちになる」「お待ちになっております」などと表現します。
同じく尊敬語の『お~だ』を使用した「お待ちです」というフレーズも、相手を主体とした言葉です。 尊敬語と謙譲語の使い方を間違えると、相手に失礼な印象を与えかねないため注意しましょう。
お待ちしておりますの使い方
何かを待つという状況は、ビジネスにおけるさまざまな場面で起こり得ます。
具体的にどのようなシーンが想定されるのでしょうか。
メールなどで相手の返事を待っているときに
メールやFAXなどの文書を作成する際、相手からの返事がほしい場合に「お返事をお待ちしております」などと一言添えれば、待っているという意思を伝えられます。
返信しなければならないことが内容から判断できる文書であったとしても、お待ちしておりますを書き足すことで、暗に催促するニュアンスを持たせることが可能です。
逆に、返信すべきかどうか判断しづらい内容である場合は、この一言があることにより、返信してほしいというこちらの意思を相手にしっかりと意識付けできます。
ビジネスにおける文書のやり取りは、電話のような会話でのやり取りではないため、1回の送信内容に伝えたいことを簡潔かつ分かりやすく表現することが重要です。
「要返信ですか?」「はい、お願いします」のような無駄なやり取りを省き、業務をより効率化するためにも「お返事をお待ちしております」のような一言を意識しましょう。
お客様や取引先の来店・来訪に
人を待つという状況は、ビジネスシーンにおけるさまざまな場面で発生します。
例えば、自社で会議や催し物を実施する際に外部から人を招く場合などです。約束された時間を守り相手が来社しても、自社側の人間にとっては「待っていた」状況であるといえるでしょう。
お客様が来店し、また来てほしいという気持ちを伝える場合にも「次回の来店を待っている」という表現ができます。 こちらから時間や場所を指定して、駅やレストランなどで取引先の人と落ち合う約束をするような場面でも「待っています」という表現がふさわしいでしょう。
このように待つという言葉は、さまざまな意味合いを含みながらあらゆる場面で使われます。
上司などの目上の人に使うこともできる
お待ちしておりますは、謙譲語と丁寧語で構成された言葉であるため、自分をへりくだって相手に敬意を示す表現です。
そのため、上司や役職者など目上の立場にある人や取引先といった相手に問題なく使用できます。 さらにかしこまった丁寧な言い回しに変えることも可能ですが、通常のビジネスシーンであれば相手に不快な印象を与えることはほとんどないでしょう。
お待ちしておりますの例文
さまざまな場面を想定しながら、お待ちしておりますを使用した例文をいくつか紹介します。
実践で役立てられるよう、しっかりとマスターしましょう。
ご連絡お待ちしております
相手から連絡がほしい場合に「ご連絡ください」と表現してしまうと、半ば連絡を強制するようなニュアンスになってしまいます。
以下に挙げる例文のように「ご連絡お待ちしております」を使えば、「急いでいるわけではない」という意味合いを含められます。相手に対する印象も良くなるでしょう。
▼使い方の例
・来週実施予定の弊社での会議に関しまして、参加意思確認のメールを差し上げております。お忙しい中大変恐縮ではございますが、ご連絡お待ちしております。
・ 貴社からの発注量が確認でき次第、速やかに手配いたしますので、ご連絡お待ちしております。
ご来店お待ちしております
接客シーンにおいて、「ご来店お待ちしております」という表現は、決まり文句といってもいいほどよく耳にするフレーズです。各種イベントや展示会などでは、「ご来場お待ちしております」という言い回しもよく聞かれます。
他にも、「ご利用」「ご出席」など、シーンに合わせて多彩な言い換えが可能です。 これらの表現には、待つという意味合いではなく、楽しみにしているという歓迎のニュアンスが強く込められています。 代表的な例文を以下で確認しておきましょう。
▼使い方の例
・本日はご来店いただき誠にありがとうございました。またのご来店をお待ちしております。
お待ちしておりますので~
お待ちしておりますで文章を終えてしまうと、どこか言い切っているような感覚が拭えずしっくりこないと感じる場合もあるでしょう。
そのようなときには『~ので』を付け足し、後に文章を続けることで、より丁寧な言い回しに変えることが可能です。
例として、以下のような文章を参考にしましょう。
▼使い方の例
・○○に関する見積書をPDFファイルにて添付しております。お時間のあるときにお目通しいただければ幸いです。ご連絡お待ちしておりますので、ご確認お願いいたします。
・本日行われました会議の内容に関しまして、後日あらためて打ち合わせのお時間を頂ければと存じます。ご連絡お待ちしておりますので、よろしくお願い申し上げます。
お待ちしておりますをさらに丁寧にするなら
相手や状況によっては、より丁寧な表現にしたくなる場面も多々あるでしょう。できるだけ相手に良い印象を与えられるような言い回しを紹介します。
心よりお待ちしております
心の底からという意味を持つ『心より』を文頭に付け加えることで、「とても心待ちにしています」というニュアンスを相手に伝えられます。
しつこすぎず親しみやすく、より丁寧な表現になるため、接客や営業の現場では頻繁に使われているフレーズです。 心よりの部分を『心から』としても、同じ意味の言い回しになります。
主な使い方は以下の例文でチェックしましょう。
▼使い方の例
・皆様方のお越しを心よりお待ちしております。
・またお会いできる日が来ることを心からお待ちしております。
お待ち申し上げております
『お~申し上げる』は、相手に対するより強い謙譲の意を示す敬語表現です。「お待ち申し上げております」とすることにより、敬意の度合いをさらに高められます。
二重敬語には当てはまらないため、文法的にも問題なく使用できる表現です。
ただし、敬意が強すぎて堅い印象や冷たい印象を与えてしまう可能性もあります。相手や状況を考慮して上手に使う必要があるでしょう。 以下に挙げる例文のように、全体的に堅苦しい文章で活きる表現です。
▼使い方の例
・忌憚ない率直なご意見を賜りますよう、お待ち申し上げております。
お待ちしておりますの言い換え表現
一つの言い方に固執せず、いろいろな言い換えを覚えておけば、表現の幅が広がります。
意味が似た言葉のバリエーションを増やし、さらなる印象アップを目指しましょう。
よろしくお願いいたします
お待ちしておりますは、メールの返事や来店など、相手に何かをお願いするときや依頼するときに使う表現です。
そのため、以下のように代替表現として「よろしくお願いいたします」というフレーズを使うことも可能です。
▼使い方の例
・ご依頼いただきました見積書を、郵便にて送付いたしました。お手元に届きましたら内容をご確認いただき、お返事をよろしくお願いいたします。
・本日はお足元の悪い中お越しいただき、誠にありがとうございました。またのご来店をよろしくお願いいたします。
お越しください
お待ちしておりますは、来店や来場といった言葉を前に付けると「また来てください」という意味を示します。状況によっては、来てくださいをへりくだって伝える敬語表現「お越しください」に言い換えることが可能です。
以下に挙げた例文のように、自分のいる場所まで相手に来てもらいたい場合にのみ使用できます。
▼使い方の例
・次回の研修会は〇月〇日に実施いたします。お忙しいところ恐縮ではございますが、本社の第一会議室までお越しください。
・弊社は業界未経験の方も活躍できる職場です。興味のある方は見学もできますので、お気軽にお越しください。
~いただけると幸いです
文末に『幸いです』と付け加えることで、強制するニュアンスが弱くなり、以下のように相手に柔らかな印象を与える効果が期待できます。
▼使い方の例
・お忙しい中大変申し訳ございませんが、お手すきの際にご連絡いただけると幸いです。
他にも『うれしいです』『助かります』『ありがたいです』など、同じような意味合いの表現があります。
メールの文面が毎回のように似た形になってしまう場合は、これらの言葉をうまく織り交ぜるようにすれば、表現のマンネリ化を防げるでしょう。
まとめ
お待ちしておりますは、待っているという言葉の謙譲表現であり、メールの返事を待つ場合やお客様の来店を促す場合などに使われます。
使い勝手の良い言葉であるため、多用すると文章が単調になりがちです。
言い換え表現も活用しながら、相手や状況に合わせて上手に使いこなせるようになりましょう。