いただいたの意味や使い方
『いただいた』は日常的に使われる敬語表現です。
複数の意味を持つ汎用性の高い言葉でさまざまなシーンで使えますが、漢字の書き分け方で悩む人も多いのではないでしょうか?
もらった・食べた・飲んだなどの丁寧な表現
『いただいた』は動詞『いただく』と、過去・ 完了・存続の助動詞『た』から成り立つ丁寧な表現です。
『いただく』は『もらう』の謙譲語で、目上の人から物品や金品をもらい、自分が恩恵を受けた場合などに使われます。もらう・食べる・飲むの意味で使用する際は『頂く』と表記しましょう。
『〇〇していただく』などのように、動詞に後続して付属的な意味を添える『補助動詞』として使われることも覚えておきましょう。
また、いただくは『食べる』『飲む』の謙譲語や丁寧語でもあります。謙譲語のいただくは自分を低めて相手を立てる表現のため、動作の対象は自分です。
「〇〇さんもどうぞいただいてください」と言わないように注意しましょう。
いただいた・頂いた・戴いたの違い
いただいたには、頂いた・戴いた・いただいたの三通りの表記方法があります。いただいたと頂いたの違いですが、前述したように、 もらう・食べる・飲むの意味で使用する際は『頂いた』と書きます。
『戴いた』の『戴』には『物の上にさらに物をのせる』や『きわめて尊いものとして扱う』などの意味があり、 よりうやうやしいニュアンスを含みます。
頂くが行為に対して用いられるのに対し、戴くは物品に対して使われることが多いのも特徴でしょう。 『〇〇してもらう』の意味で補助動詞として用いる際は『いただいた』とひらがなで表記します。
▼使い方の例
・部長と一緒にディナーを頂きました。
・この度は審査員特別賞という栄誉ある賞を戴きました。
・先輩にアドバイスをしていただきました。
いただいたの例文
ビジネスシーンでよく登場するいただいたの使い方を確認しましょう。
電話やメールでそのまま使える言い回しも多いため、例文ごと覚えておくと便利です。
頂いたメールで恐縮ですが
相手からのメールに返信をする際、本件とは別の用件も話しておきたいときに使われる言い回しです。
『恐縮ですが』には『身も縮まるほど恐れる』の意味があり、相手に依頼・お願いをする際に用いられます。
▼使い方の例
・頂いたメールで恐縮ですが、先日お問い合わせいただいた〇〇の見積書を添付いたしましたので…
・頂いたメールで恐縮ですが、〇月△日のミーティングの内容が決定いたしました。
いただいた次第です
『いただいた次第です』のいただいたは動詞の後につく補助動詞で「〇〇してもらった」の敬語表現です。 『次第』は、状況や成り行きを報告するときに用いられる書き言葉で、謝罪・変更点の連絡・近況報告などで多用されます。
「〇〇という訳(状況)です」の丁寧な言い回しと考えましょう。
▼使い方の例
・人員が不足してしまい、みなさまにご協力いただいた次第です。
・サンプルを実際にお見せしたく、弊社に足を運んでいただいた次第です。
いただいたにもかかわらず
『いただいたにもかかわらず』は、相手に何かをしてもらったのに、結果が望む方向に行かなかった場合に使われる表現で、多くは謝罪の言葉を伴います。
漢字表記は『拘わらず』ですが、『拘』が一般的ではないためひらがなで表記するのが通常です。
▼使い方の例
・ご足労いただいたにもかかわらず、不在にしておりましたことお詫び申し上げます。
・お力添えをいただいたにもかかわらず、不甲斐ない結果になってしまい、大変申し訳ございません。
いただいたの類語
いただいたにはいくつかの類語が存在します。どれも目上の人を立てる丁寧な表現ですが、ニュアンスが微妙に異なります。
例文を見ながら違いを確認しましょう。
賜った
『賜った(たまわった)』は、動詞『賜る』の連用形と、助動詞『た』から成り立ちます。 賜るには『(物品や言葉を)もらう』の謙譲語と『与える』の尊敬語の二つの意味があり、どちらも目上の人を敬う丁寧な表現です。
いただくよりも相手を敬う度合が強く、かしこまった場面や挨拶で多く用いられます。
▼使い方の例
・創立50周年に際し、○○会長よりお言葉を賜りました。
・天皇陛下が受賞者にご祝意を賜りました。
・先生よりご教示賜りたく存じます。
頂戴した
『頂戴(ちょうだい)した』は、動詞『頂戴する』の連用形と助動詞『た』から成り立ちます。 『頂戴』は、『もらう』または『もらって食べること』を意味する謙譲語です。
『頭の上にささげ持つこと』の意味もあり、自分を低めて目上の相手を立てるニュアンスが含まれています。
▼使い方の例
・〇〇さんから差し入れを頂戴しました。
・教授より貴重なご意見を頂戴しました。
・先ほど頂戴した資料で、確認したい箇所がございます。
「頂戴いたします」という表現は、謙譲語が重複する二重表現です。
日常では慣用的に使用されおり、完全な間違いとまではいえませんが、公文書やビジネスメールでの使用は控えたほうが無難です。
承った
『承った(うけたまわった)』は、動詞『承る』の連用形と、助動詞『た』から成り立ちます。 承るは聞く・受ける・引き受けるなどの謙譲語で、権力のある者や目上の人の言葉や指示を『謹んで聞く(引き受ける)』という意味があります。
社長などの重役や大切な顧客などに対して用いるのが一般的で、社内ではあまり使われません。直属の上司や同僚間ではいただいたを使うのがよいでしょう。
▼使い方の例
・(電話で)注文を承りました、ありがとうございます。
・今回のプロジェクトに関して、社長よりお褒めの言葉を承りました。
まとめ
いただいたはいくつもの意味を持つ言葉です。
使い方を間違えなければ、目上の人や顧客に対する敬意をさまざまなシチュエーションで示すことができるでしょう。
ビジネスメールのときは、いただく・頂く・戴くの三通りの表記方法をしっかりと書き分けたいものです。