早速ですがの意味とは?
挨拶や雑談からはじまり、いよいよ話の本題に入る際「早速ですが…」という言葉を使います。
話を切り替えるスイッチのような役割を持ちますが、『早速』にはどのような意味があるのでしょうか?
すぐに・ただちに
はやい(早・速)という漢字が二つ組み合わさった『早速(さっそく)』には、すぐさま・ただちにという意味があります。 文頭で「早速ですが」「早速だが」「早速」と使われるときは、本題に入る際の『切り替え』としての役割があると考えましょう。
挨拶後すぐに会議の内容を話すのは唐突な印象を受けますが「早速ですが…」とワンクッション置けば、参加者はこれからの会議に向けて気持ちを引き締めることができます。
起こし言葉の一つ
早速ですがは『起こし言葉』の一つです。起こし言葉とは、用件に入るときの起辞のことで「この後が本文です」という合図になります。 たとえば、手紙は頭語からはじまり、時候の挨拶や日頃の感謝などを述べる『前文』がきます。
次に手紙の核心となる『主文』が続きますが、主文に入る前に、起こし言葉でワンクッション置くと文章の流れがより自然になるのです。
起こし言葉は、早速ですがのほかに、さて・ところで・実は・このたび・突然ですが・かねて申しましたようになどが挙げられるでしょう。 手紙やメールなどの書面はもちろん、話の流れをよりスムーズにするために会話の中でも頻繁に使われています。
早速ですがを使う場面
家族や親しい友達との会話で「早速ですが」が登場するケースは稀でしょう。
時間や手間を省略するための言葉なので、主にビジネスシーンや手紙の中で使われます。
プレゼンなどに
早速ですがは、ただち・すぐの意味を表す『早速』と逆説を表す『ですが』から成り立っています。 直訳すれば「すぐにやらせてもらいますが」となり「(説明や挨拶を省き)すぐに話を進めることをお許しください」という相手の了承を得るニュアンスが含まれています。
プレゼンテーションや会議は、時間配分が決まっているため、挨拶や前置きで長々と時間を費やすことは許されません。
自己紹介や挨拶を簡単に済ませた後に「早速ですが…」と本題に入るのが好ましいでしょう。
▼使い方の例
・おはようございます、営業部の田中です。早速ですが、今月の受注状況につきご報告いたします。
・本日はお忙しい中お集まりいただき誠にありがとうございます。早速ですが、本日は弊社の〇〇という新商品を紹介したいと思います。
商談や依頼に
商談では、最初に軽い自己紹介と挨拶をしてから本題に入るのがマナーです。
しかし、「時は金なり」のビジネスの世界では、相手への世辞はそこそこにすぐに商談に入らなければなりません。 早速ですがは長々とした話を省く目的があり、相手に交渉開始を知らせる合図ともいえます。
また、相手に何か依頼を受けている場合は「早速ですが、前回ご依頼いただいた…」と話をはじめるとスムーズです。
▼使い方の例
・早速ですが、前回ご相談いただいた納期は、〇月△日まで延長することが可能です。
・どうぞお掛けください。早速ですが、弊社のプロジェクトの概要をご説明申し上げます。
手紙に
手紙では、時候の挨拶や感謝や安否の挨拶の後に、早速ですが・さて・ところで・実は、などの起こし言葉を入れて手紙の目的や用件を簡潔に述べます。
商談における早速ですがは、くどくどしい前置きを省略し、早急に本題に入るために用いられます。
一方、手紙では『話題転換の合図』としての目的があります。 一度の手紙に用件が二つ以上入ると、内容がわかりにくくなるため、本当に伝えたい内容のみに絞るのがよいでしょう。
▼使い方の例
・日頃は大変お世話になり厚くお礼申し上げます。早速ですが、交流会の案内状を拝読いたしました。
・長らくご連絡を怠り深くお詫び申し上げます。 早速ですが、本日は大学の同窓会の件でお便りを差し上げました。
早速ですがの使い方
時間や手間を省き、交渉開始の合図にもなる言葉ですが、シチュエーションによっては相応しくない場合もあります。
注意点を確認し、相手に失礼のない使い方を心がけましょう。
目上の人にも使える
早速ですがは、目上の人にも違和感なく使えるクッション言葉の一つです。敬語ではありませんが、逆説の「ですが」が「失礼ですがお許しください」の意味を添えるため、相手に配慮した言葉ともいえます。
会議や報告など、上司や目上の人がいるシチュエーションでも頻繁に使われており、すぐに本題に入るよりも話の流れが自然になるでしょう。
なお、社長や重役が参加する重要な会議や商談では「早速ではございますが」「早速で恐縮ですが」など、より丁寧な表現が望ましいです。
メールへの使用は避ける
書面における早速ですがは、前置きと本題が明確に分かれている場合に使うのが通常です。
社内の業務メールや取引先とのビジネスメールには「貴社ますますご繁栄のこと…」などのわずらわしい挨拶や前置きがなく、本題のみを簡潔に述べるのが一般的なので、前置きから本題への転換を促す起こし言葉は必要ないといえるでしょう。
逆に、早速ですがからはじまるメールは相手に切羽詰まった印象を与えるため、使用は避けたほうが無難です。
早速ですがの例文
早速ですがが多用されるのは主にビジネスシーンです。具体的な例文を交えながら使い方を確認しましょう。
早速ですが表題の件について
ビジネスメールでは早速ですかの使用は控えたほうが賢明ですが、例外もあります。
「〇〇の件」というメールのタイトル(表題)を受け、そのまま本題に入るときは、話の冒頭に「早速ですが表題の件について…」と一言添えることができます。
▼使い方の例
・いつもお世話になっております。早速ですが表題の件について、商品の仕様書を送付いたします。
・早速ですが表題の件につきまして、以下の通りご報告とお詫びを申し上げます。
早速ですが本題へ入らせていただきます
会議やプレゼンでは「早速ですが本題へ入らせていただきます」という言い回しも頻繁に使われます。
すぐに本題に入ると不自然に感じる場合や、話題転換の合図として用いられることが多く、「本題に入る」と明確に示されると、聞き手は一気に身が引き締まります。
▼使い方の例
・本日は貴重なお時間をいただきありがとうございます。早速ですが本題へ入らせていただきます。
早速ですがの類語
日本語の中には、前置きと本題の間のクッションになる類語がたくさんあります。
早速ですががあまり相応しくないと感じるシチュエーションでは、別の類語に置き換えて表現してみましょう。
さて
『さて』は、一つの話が終わり、先の文脈と関係のない話をするときに用いる言葉です。「さて、話は変わって」と、話題を転換する働きをしています。
早速ですがは、挨拶の後にすぐに使うことができるのに対し、さては前文にある程度のボリュームが必要です。 挨拶の後にすぐ「早速ですが、先日お話したA商品の仕様書を送信いたします」と述べるのはOKですが、「さて、先日お話した…」と続ければ話の流れとして不自然と言わざるを得ないでしょう。
さては、能率重視のビジネスメールよりも、手紙の中で挨拶や前文を述べた後の『切り替え』として使われるケースが多いです。
▼使い方の例
・日頃はとかくご無沙汰いたしまして誠に申し訳ございません。さて、この度は〇〇君がご結婚とうかがいました。誠におめでとうございます。
唐突ですが
『唐突』は、前触れもなく、だしぬけでその場にそぐわないさまを意味する言葉です。「唐突ですが」は、先行文脈とは全く関係のない話題を提供する際に、相手の了承を得るニュアンスを含みます。
ある話題で盛り上がっているときに、何の前触れもなく話題が変わると、不快感を覚える人もいますが「唐突ですが…」を添えることで、相手への配慮を示すことができるでしょう。
「唐突(突然)で申し訳ないのですが」「唐突で恐縮ですが」と表現するとより丁寧です。
▼使い方の例
・唐突ですが、忘年会の司会は誰にいたしますか?
・唐突で申し訳ないのですが、ご来社の日時を変更していただけませんでしょうか。
つきましては
『つきましては』は、前の話から次の話題に移行する際の接続詞的な役目を担う言葉で「それゆえ」や「したがって」のように、前にある語句や文が、後にある文や語句の原因・理由などになっている順接的な意味合いも含んでいます。
『ついては』の丁寧な表現にあたるため、目上の人やビジネス文書で問題なく使用できます。
▼使い方の例
・今月をもちまして、鈴木部長が退職されることとなりました。つきましては、今後のご健勝と益々のご活躍を祈念する気持ちを込めまして、下記の通り送別会を行います。
・この度の台風により、製造設備の一部に損傷が発生しました。つきましては、本日から当面の間、受注を停止させていただきます。ご不便をおかけしますが、ご理解のほどよろしくお願い申し上げます。
ところで
『ところで』は、『さて』と同様に、話題を転換するときに使う表現です。 さてやところでの前にはボリュームのある前置きの文章や話が必要で、早速ですがのように、本題を急に切り出す場面ではあまり使用されません。
また、さては前の話に関係ない別の話題を提案する場合に使われますが、ところでは、前述した話題の流れに従う形で話が転換されるときに使われます。
▼使い方の例
・新商品についての企画書を拝読しました。ところで、A商品の規格についてですが…
・新年会の会場が決定いたしました。ところで、今年の司会はどなたが担当されますか?
まとめ
早速ですがは、話題の変換を示す起こし言葉であり、相手の状況や心情に配慮したクッション言葉ともいえます。場面に適した言葉を選べば、会話や文章の流れがよりスムーズになるはずです。
目上の人や取引先の顧客にも問題なく使えますが、ビジネスメールでは使用を控えたほうがよい場合もあることを覚えておきましょう。