『〇〇がございます』の意味と使い方
社会人になると文章や発言の語尾に『○○がございます』を使う機会が増えるものです。
しかし、なんとなく礼儀正しく聞こえるという理由で、『○○がございます』を、むやみやたらと多用する人もいます。
『○○がございます』の正しい意味を知って、適切な使い方を習得しましょう。
意味①:丁寧語『です』をさらに丁寧にした表現
『○○がございます』は、『○○だ』の丁寧語『です』を一段と丁寧にした表現です。
名詞や形容動詞に続くことが多く、形容詞の後にくる場合は『ございます』の前に助詞の『が』『に』『で』などを付けます。
助詞+『ございます』で、『です』の丁寧語だと理解しておきましょう。
▼使い方の例
・こちらが本会議の資料でございます。
また、『ございます』の形で形容詞に接続する際には、もう一つ使い方があります。
助詞を間にはさまず、『ございます』自体が、補助動詞の役割をはたすときです。
補助動詞は尊敬表現『お~なる』のようにほかの動詞に付けて、敬語の意味合いを加えます。
『ございます』の前に形容詞を直接入れる場合は、形容詞の最後はウ音にするのがルールです。
▼使い方の例
・大変おいしゅうございます。
このように、形容詞を丁寧な表現にすることができます。
意味②:丁寧語『あります』をさらに丁寧にした表現
『〇〇がございます』は、『ある』の丁寧語『あります』の、さらに丁寧な表現でもあります。居る・在るの尊敬語『ござる』に、丁寧語の『ます』を付けた形です。
▼使い方の例
・こちらにお探しの商品がございます。
・もう少し進まれると左手にトイレがございます。
『〇〇がございます』は丁寧語のため、聞き手を敬います。お客様や上司などに質問された際、『あります』を『〇〇がございます』と答えるだけで、好印象になるでしょう。
しかし、会話中に『〇〇がございます』が何度も出てくると、回りくどい印象になります。
『あります』や『思う』の謙譲語+丁寧表現『存じます』を織り交ぜながら、テンポよく答えましょう。
▼使い方の例
・在庫はこちらにございます。ほかにもお探しの商品がありましたらお申し付けください。
・こちらに調査結果がございます。今後の指針を決める際の参考にしていただければと存じます。
なじみのある『〇〇がございます』の使用例
ビジネスシーンやメールなどで使われるがございますの例文を見ていきましょう。単なる受け答えというよりも案内や質問として多く使われます。
▼使い方の例
・ご不明な点がございましたら、いつでもお声がけくださいませ。
・お手伝いできることがございましたら、なんなりとお申し付けください。
・アメニティは各お部屋にご用意がございます。
また、名詞や形容詞と『〇〇がございます』の間に以下のように動詞をはさめば、より上品でわかりやすい表現になるでしょう。
▼使い方の例
・こちらに準備してございます。
・詳細は裏面に書いてございます。
準備する・書くといった動作を加えると、『あります』の意味に具体性が加わるでしょう。
『〇〇がございます』がよく使われる場面
『〇〇がございます』は、ビジネスメールやお客様・上司との会話の中で使われる丁寧な表現です。
しかし、すべてのセンテンスを『〇〇がございます』で結ぶと、大げさな印象になりかねません。
『〇〇がございます』を使う場面でも、特にふさわしい場面を紹介します。
質問があるとき
『〇〇がございます』は、質問を申し出るときによく使われる表現です。
▼使い方の例
・○○について質問がございます。お時間をいただけますでしょうか?
・傘や帽子などのお忘れ物はございませんか?
『ございませんか』という表現は、シンプルで相手も答えやすい聞き方でしょう。
聞かれた際に同じように敬語で答えるなら『ございます』『ございません』が正しい表現です。
普段、店員さんなどに聞かれたときには少し堅苦しく感じるかもしれません。『あります』『ありません』でも十分でしょう。
また、『ございます』を使って、質問の文章を途中で区切るのもよく使われる表現です。
▼使い方の例
・お伺いしたいことがございますので、お手すきのお時間に折り返しお電話を頂戴できますか?
・お忙しい中大変恐縮でございますが、○○についてご教示いただけますか?
相談したいことがあるとき
質問だけでなく、相談など相手の時間を取らせるお願いをするときは、ありますよりもがございますを使うと礼儀正しい印象になるでしょう。
▼使い方の例
・部長、今回のプロジェクトについてご相談がございます。
たとえば納期変更や異動などについては『相談がございます』を正式な申し入れや依頼のクッション言葉として使えます。
▼使い方の例
・先日内示された異動についてご相談したことがございます
・納期についてご相談したいことがございます。
こちらの要望でありあくまで相談である、と表現するためにも『したい』をはさむのがおすすめです。
迷いやすい敬語表現
『〇〇がございます』は、正しい使用方法なのか迷う表現でもあります。
使い過ぎれば間延びするうえ、日常生活の中でどこまで使ってよいのかわからない人もいるでしょう。
『〇〇がございます』にまつわる、迷いやすい敬語表現について解説します。
『ございますでしょうか』は二重敬語のためNG
飲食店などで「ご注文は以上でございますでしょうか」などと言われて違和感を持ったことはありませんか?
『ございますでしょうか』は二重敬語であり、普通の会話表現に追い換えると『ですますか』のように、丁寧表現の語尾を二つ使った誤った文法です。
また、『ございませんでしょうか』のような否定形の二重敬語も、よく耳にする表現ですが誤りです。『ございます』には、『ます』にすでに丁寧表現が含まれています。
『ございますか』など、正しく言い換えよう
『〇〇がございます』を使って丁寧に質問したいときには、そのまま『ございますか』が正しい日本語です。
▼正しく直した例
・お探しの品はこちらでございますでしょうか?
→お探しの品はこちらでございますか?
否定表現として、『ございませんか』もあります。
▼使い方の例
・○○個で承りましたが、追加発注はございませんか?
・説明は以上ですが、ご不明な点はございませんか?
否定形を使うと、相手が気兼ねなく「ない」と答えやすくなる利点があります。
しかし、否定形の質問は相手の考え方や使い方によっては、失礼な印象になるため注意が必要です。
▼NG例
・こちらで間違いございませんか?購入後のお客様都合による返品交換は受け付けておりません。
相手が間違っていないか疑っていたり「ないよね?」と答えを押し付けたりするようなニュアンスもゼロではありません。
このような場合は「こちらでよろしいでしょうか?」を使ったほうがスマートです。
『おありですか』も使える
『ございますか』を一つのメールや会話の中で何度も使っていると、くどく感じるときもあります。ほかの表現に言い換えたくなることもあるでしょう。
その場合は『おありですか』も使えます。
▼使い方の例
・この後お時間がおありですか?少しご相談したいことがございます。
・そちらに在庫はおありですか?余裕がございましたらこちらに回していただけますか?
『おありですか』は『ありますか』の尊敬語です。『自分に対しては使えない点』だけは、しっかり覚えておきましょう。
▼使い方の例
・ご質問はおありですか?
―はい。○○について2・3確認したいことがございます。
文章に『ご』が続いても問題ないか
敬語で迷いがちなのが『二重敬語や回りくどい表現になっていないか』です。
特にビジネスメールや資料の概要など、文章で敬語をつかうときは気を遣うでしょう。
文中で『お』や『ご』の字が目立つように感じて、なんとなく気になる人もいるかもしれません。どのようにすれば、敬語が自然に使えるか見ていきましょう。
正しい言い方であればOK
文中に敬語や尊敬や謙譲表現である『お』『ご』が続いても、相手への敬意を示すため誤った使い方でなければよいという意見もあります。
▼使い方の例
・先日はお寒い中ご訪問いただきまして、誠にありがとうございます。
それぞれ異なる言葉に正しくかかる敬語が続く場合は違和感がありません。
関係性にもよりますが、文章が礼状や依頼といった『相手への敬意をたっぷり示す必要性があるもの』に関しては、積極的に敬語を使いましょう。
多いかな?と思ったときは省略も可能
何度もやり取りしている間柄でのメールや、複数の人と共有する文書ではない場合などは、過剰な敬語は必要ない場合もあります。
距離が縮まらなかったり回りくどいと感じられたりするときは、省略するのも手です。より気持ちが伝わりやすく失礼のない言い回しに言い換えられるとよいでしょう。
▼省略例
・この度はお気遣い溢れるお品を頂戴いたしまして、誠にありがとうございます。
→先日は素敵な贈り物をありがとうございます。お気遣い感謝しております。
敬語表現が複数ある場合は『前のほうを省略』したほうが、敬語の余韻を最後に残しつつ自然な文章を作れます。
まとめ
『〇〇がございます』は、『です』『あります』の丁寧語です。相手にも自分にも使えるため便利な敬語表現として覚えておくとよいでしょう。
『〇〇がございます』を効果的に会話やメールに織り交ぜれば、礼儀正しく大人っぽい印象になります。取引先や上司に対しては積極的に使用しましょう。
ただし、『ございますでしょうか』などと誤った二重表現にしたり、ほかの敬語と組み合わせたりすると敬意が大げさな印象になったりすることもあります。 適切で適度な使い方を心がけるようにしましょう。