旅を通して未来を切り開くためのヒントを見つける、女性のエンパワーメントプロジェクト「Future is MINE」。第7弾となる今回の物語の主役は、北海道・二風谷に住む32歳のアイヌの女性、萱野りえさんです。
そもそも“アイヌ”って何?
“アイヌ”と聞いて、何を思い浮かべるでしょうか? 本題に入る前に、まずアイヌについての説明をしたいと思います。
アイヌとは、北海道、東北地方、サハリン、千島列島などで独自の文化を育んできた日本の先住民族のこと。アイヌは「人間」という意味なのですが、彼らは動物や植物、風や雲、道具など、あらゆるものに魂が宿っていると考え、それらすべての存在、いわば神々のことを「カムイ」と呼んでいます。この世にあるすべては、本来あの世で暮らすカムイたちが現れた姿で、狩猟や採集によって得る糧はカムイからの恵み。カムイや祖先への感謝や敬意を踊りや歌で表現することは、アイヌの生活では欠かせないものでした。
しかし、アイヌは独自の文化や世界観を堅持して生きてきましたが、特に明治時代以降、国の政策に翻弄され、アイヌ文化は途絶える危機に陥ります。和人と同じ文化や生活を強要する同化政策により、鹿猟や、女性の入れ墨など、昔から受け継がれる伝統が禁止されてしまったのです。
文化だけでなく、日本に統合されたことにより、その土地に住む権利も奪われ、アイヌはそれまでの生活を大きく変えることになったのです。
向き合うのが怖い…アイデンティティの葛藤
萱野りえさんは両親、祖父母ともにアイヌ。アイヌが多く暮らす北海道・阿寒湖で育ち、物心つく前から、母と姉の影響でアイヌの歌や踊りに触れて育ちました。しかし、小学校にはアイヌの生徒が少なかったこともあり、コミュニティのなかでマイノリティとなったりえさんは、アイヌであることを理由にからかわれるようになります。
「『アイヌ』と口に出すことさえ怖い」……
自分のアイデンティティに自信を持てなくなったりえさんは、19歳のときに地元を離れ、逃げるように一人、都会の札幌へ。
しかし、そこでアイヌについて語り合える友人と出会ったことで意識が変化。アイヌ語で歌うボーカルグループ、マレウレウに所属し、札幌大学の本田優子教授が設立したアイヌの奨学金制度を活用し、大学生になります。
アイヌ文化を必死で学ぶ日々。徐々にりえさんのなかに「自分が信じるアイヌ文化の素晴らしさをもっといろんな人に知ってもらいたい!」という純粋な想いが芽生えます。アイヌから離れていた時間を取り戻すように無我夢中で活動しますが、現実と向き合う中でその勢いは失速していきます。
その後結婚、出産を経て、母になったりえさんの中で沸き上がったのは「私はこのままでいいのか?」という想い。
毎日朝7時に起き、9時に娘を保育園に預け、夫と運営するゲストハウスと自宅の掃除をし、16時にお迎え、そして晩ご飯の準備、寝かせ付けをする……子育ては楽しいけれど、忙しい日々はあっという間に過ぎていく。何かをしなくてはいけない気がする。でも、「何」を「どうすれば」いいのか……?
その問いを見つけるために、彼女は今回の旅に出ました。
旅先で出会った“同じ”なのに“違う”先住民族
目的の地、アメリカ・フロリダにいたのは先住民族のセミノール族。彼らは、アイヌと同じように長い間迫害された歴史を持ちながら、現在は自分たちの自治区を持ち、経済的自立も果たしています。同じ痛みを経験しながら、実現不可能とも思えるビジョンを達成し、常に未来を見据えるセミノール族。
「彼らとは共通点が多いのに、何がアイヌとは違うのか…?」
ミス フロリダ セミノールとして活動する、若干20歳のリーダー、デュランテが案内役となり、様々なセミノール族のリーダーに会うことになったりえさん。彼らはりえさんの痛みを受け入れ、手を差し伸べます。
北海道から遠く離れたフロリダの地で、セミノール族との対話、そして自分自身との対話を経て、りえさんは何を学び、何を見つけることができたのでしょうか?
滞在したのはハードロックホテル
日本ではカフェとして有名なハードロックは、セミノール族がオーナーを務め、世界76ヶ国で260以上のカフェ、リゾート、ホテル、カジノなどを展開する世界的なエンターテインメントブランド。今回の旅で滞在したのは、彼らが手がけた世界初のギター型ホテル「セミノール ハードロック ホテル&カジノ ハリウッド」。
2019年秋にオープンしたばかりのこのホテル。アイコニックなギター型以外にも見どころはたくさん。巨大なラグーンプールや、24時間営業のレストラン、ショッピングモールなどエンタメが詰まった空間です。
素敵な未来を想像し、一歩でも近づくために旅に出る女性達の物語を伝えるFuture is MINEシリーズの7作目。これを布石にぜひ皆さんも自身の未来を想い描いてみてください。自分の未来の舵をとるのはあなただから。