今回の旅人 井上智絵
モデル・井上智絵。20歳の頃、ファッションブランド「Jenny Fax(ジェニーファックス)」のショーモデルにスカウトされたことをきっかけに、モデルとしてのキャリアをスタート。現在は、俳優の松田翔太らとともに、スキーブランド「BLACK CROWS(ブラッククローズ)」のアンバサダー兼モデルなど、多様な活動を行っている。
どちらも本気で取り組みたい。けれど相容れないこと
現在、モデルはもちろん、スポーツブランドのアンバサダーやライダーとしても活躍する彼女は、幼い頃よりスポーツ万能。両親の勧めで2歳からスキーを習い始め、その腕前はプロ級に。中学時代から始めた陸上競技では、運動神経の良さからコーチ陣期待の選手となった。
彼女には、中学時代からずっと憧れているスポーツがあった。それが24歳でやっと始めた、インラインスケート。
「中学時代、地元でダボダボの服を着ていたお兄さんたちが、インラインスケートを履いて手すりの上を滑っているのを見て『え、かっこいい!』って。でも、当時陸上競技の選手として期待を背負っていたし練習でいっぱいいっぱいだったから、そのときにはどうしても始めることができませんでした。その後も生計をうまく立てることを考えていて、なかなか始められず……。でも24歳のとき、ちょっと生活が落ち着いてきて。今なら、ちゃんと時間を作って本気でインラインに取り組める!と思い、ついに始めたんです」
しかし、インラインスケートは斜面をスケートで駆け下りたり、ジャンプ台を使ってターンをしたりと、危険と隣り合わせ。怪我がつきもののスポーツ。当然モデルが職業である彼女に対して、周囲から止める声が上がった。
「インラインには怪我がつきもの。モデルとして仕事していきたいならばやめるべき、と何度も言われました。でも実際、インラインをやっているから繋がった仕事もあるんですよ。スポーツブランドのお仕事は、インラインをやっていたからこそ、いただけたと思っています。
モデルは、もちろん大事。正直最初は、スカウトされて興味を持ったからという理由で始めたけど、今は職業としてどこまで自分を表現できるのか、一生かけてやっていきたいと本気で思っています。でも私にとっては、インラインも同じくらい一生やっていきたいことなんです。趣味ではあるけれど、本気の趣味。インラインは、私そのものが表現されている場。そのままの私が最大限、勝手に引き出されちゃうような。その上、私を仕事や仲間やいろんなものと繋げてくれる。
だからモデルもインラインも、私の人生に不可欠で……。どちらも絶対に諦めたくないんです」
力を試したい、職業のモデル。本気の趣味であり、彼女をさまざまなものと繋げてくれるインラインスケート。彼女の人生にはどちらも不可欠。だが周囲の声に一理あることも、もちろん事実だ。
「今後モデルもインラインも、諦めずに一生やっていきたい。でも周囲の方が心配してくださっていることもすごくよくわかるから……。私の選択は、本当に間違っていないのか。それを再確認したいんです。そのために、私のスーパースターに会いに行きたい」
次回は旅の記録編。果たして、彼女が向かった先とは?
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Videographer:Naoki Ono/Kotaro Takahashi
Model:Chie Inoue
Editor:Momoka Kowashi
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