「甘んじて」の意味って?
甘んじて、という言葉は日常会話でよく出てくるわけではなく、限られたシーンで使われるため、意味をよく理解できていない人は多いかもしれません。どんな意味があるのか、見ていきましょう。
仕方なく受け入れること
「甘んじて〇〇する」と言われたら、『不本意ながらも仕方なく受け入れる様子』を意味します。自分の望みにそぐわないことであっても、受け入れなければならない状況です。
不十分なところはあっても、現状を受け入れるしかないシーンでよく聞くフレーズでしょう。
例えば、重要なことを交渉するシーンなどで、使われることが少なくありません。「現状に甘んじていると、成長がない。この提案を受け入れよう」というように使います。
▼「甘える」という意味で使うのは間違い
甘いという漢字を使っていることから、何かに甘えることだと勘違いしてしまう場合があります。同じ字を使っているので勘違いしがちですが、違う意味になってしまうので、注意しましょう。 例えば「彼氏と一緒にいると甘んじてしまう」という表現はNGで、「彼氏と一緒にいると甘えてしまう」が正しい表現です。
「甘んじて」の類語
甘んじてと似た言葉に『甘受(かんじゅ)』があります。受け入れなければならないことは決まっていても、全てに納得したわけではないというニュアンスを含む表現です。
好ましくない条件を甘んじて受け入れることを意味し、口頭より文書などで使われることが多いでしょう。『不本意ながら』や『やむを得ず』なども、ほぼ同じ意味を持つ言葉として使われます。
「甘んじて」の使い方
使い慣れない言葉を口にするときは、詳しい使い方を知っていないと恥をかくことがあります。甘んじて、という言葉の具体的な使い方や、例文を見ていきましょう。
「甘んじて」の言い回しの変化
もともとは『甘味す』という言葉で、甘い味として味わう、という意味を持っていました。あまみすが『あまんず』に変化し、動詞形にしたものが『あまんずる』になります。
時代の移り変わりとともに、口語に合わせて文語を変化させるようになり、現代では甘んずるではなく、甘んじるを使うことが多いようです。しかし、どちらも意味は同じです。
副詞と動詞どちらにも使われることがポイントで、副詞として使うときは『甘んじて〇〇する』、動詞として使うときは『〇〇に甘んじている』というように使います。
「甘んじて」の例文
- 今回の処分を甘んじて受け入れる所存です
- 現状に甘んじることなく、精進して参ります
甘んじてという言葉は、意外にさまざまなシーンで出番があります。例えば「今回の処分を甘んじて受け入れる所存です」というように使う場合、どんな処分でもおとなしく従うという意味です。
会社や裁判所などから受けた処分に対し使われることが多く、副詞的な使い方になります。甘んじるを否定形として使うこともあり「現状に甘んじることなく、精進して参ります」というように使うことも少なくありません。
表彰などを受けた際や、良い評価を受けた場合によく使う言い回しで、満足せずに努力を続けるべきだと思っているという意味です。
「甘んじて」を使う際の注意点
物事を受け入れなければならない状況は、毎回同じではありません。渋々、受け入れていると思われれば、好印象を与えない場合もあります。使用の際の注意点を見ていきましょう。
反省すべきときに使うのはNG
『甘んじて受け入れる』という言葉は、自分に全面的に非があり反省しなければならないようなときに使うと、本当に反省しているのか疑われてしまう心配があります。
不本意ながら反省すると言われたら、悪いと思っていないような態度に受け取る人は多いでしょう。例えば、仕事のミスを顧客に謝罪する際などに使えば、強気な態度だと思われ、余計に怒らせることになりかねません。
どちらかというと、問題が起きたときに謝罪される側が「仕方ないから大目に見てあげますよ」というニュアンスで使うことの方が一般的です。
他人に対して使うと失礼な印象に
他人に対して使うときは、失礼な意味になることがあるので注意しましょう。例えば「あの子は現状に甘んじている」と言うと、向上心がなく努力していないという意味になります。
『指導する立場の人』が目下の人に使うことはおかしくないですが、関係性が薄い人に軽々しく使うと、批判していると受け取られかねません。
その人の本当の気持ちを理解しようとせず使用すると、場面によってはかなり失礼な印象を与えます。一歩間違うと、人の気持ちを考えない人だと思われてしまうでしょう。
まとめ
甘んじてという言葉は、仕方なく受け入れるという意味を持ち、副詞や動詞として使います。受け入れづらい部分があっても、満足するしかないような状況で使われることを押さえておきましょう。
否定形での使い方を覚えておくと、現状に満足せずに前向きな発言をする際に役立ちます。ただし、謝罪しなければならないときは、強気な印象を与えてしまうので、使わないように注意しましょう。
正しい意味を理解していないと、使いどころを間違えてしまいます。シーンに応じた使い方を学び、ここぞというときに役立てましょう。