「誠に勝手ながら」の意味とは
ビジネスメールなどでよく使われる誠に勝手ながらとは、具体的にどのような意味なのでしょうか。うまく活用するために、まずは言葉の意味を細かく理解しましょう。
自分都合のお願いや判断を表明
「誠に勝手ながら」は、自分の都合による頼みごとや判断を相手に示す表現です。「こちらの都合であるにもかかわらず」という気持ちを伝えたい際に使います。
言葉を分解すると、『誠に』は『実に』『ほんとうに』、『勝手』は『都合のよい』『便宜がよい』、『ながら』は『~ではあるものの』『~にもかかわらず』を意味します。
文法的に敬語としての要素はありませんが、丁寧さを表現する言い回しであるため、立場が上の人など敬意を示すべき相手に対して使うことが可能です。
また、暗に申し訳ない気持ちや謝意を伝えることにもなるため、謙遜し相手にへりくだる印象を与える効果もあります。
ビジネスに使えるクッション言葉
誠に勝手ながらは、伝えたくても言いづらい本題に入る前に、一言添えて気遣いを示す『クッション言葉』の一つです。
お願いしたいことやストレートに言いにくいことがある場合、直前にクッション言葉を使うことで、その名の通りクッションのようにショックを抑える役目を果たしてくれます。
クッション言葉は、プライベートやビジネスでは想定されるさまざまなケースに合わせて多彩な種類が存在します。さらに、本題の前に添えるだけで簡単に使えるため、大変便利な言葉です。
クッション言葉の代表的な例としては、誠に勝手ながら以外にも以下のようなものがあります。
▼クッション言葉の例
・恐れ入りますが
・早速ですが
・失礼ですが
・差し支えなければ
・お手数をおかけしますが
・もしよろしければ
・私でよければ
「誠に勝手ながら」の使い方
お願いや断りなどを伝える際に使用する誠に勝手ながらは、多くのケースで使える便利な表現です。具体的にどのような場面で使用できるのか確認しておきましょう。
電話やメールなどで使用可能
仕事において、電話やメールは業務に欠かせないツールです。それらを使ったやり取りは、豊かな語彙力や表現力が求められる場でもあります。
なかでも、メールやFAXなど文書でのやり取りは、感情が伝わりやすい会話と違い、文章だけでコミュニケーションを図らなければなりません。豊富なボキャブラリーが備わっていれば、文章でも自分の感情をより的確に相手へ伝えやすくなります。
「誠に勝手ながら」は、電話やメールはもちろん、文書でも使用できる大変便利な言葉です。使い勝手のよいクッション言葉の一つとして、さまざまな場面で大いに活用しましょう。
目上の人に使う場合
誠に勝手ながらは、相手に伝えたいメインテーマの前に添えて、丁寧に詫びを入れる言葉です。
目上の人にも問題なく使えます。
ただし、敬語に分類される表現ではありません。電話などの会話や、手紙・メールなどの文書で使用する場合は、言い回しにひと工夫加える必要があるでしょう。
特に、『ながら』という部分は、人によっては敬意が感じられない失礼な表現と思われることもあります。状況に合わせてフレーズを変えてみましょう。
例えば、メールなら『ではございますが』『とは存じますが』とすれば、丁寧でへりくだった言い方ができます。会話なら『ですが』『なお願いですが』とすれば、相手に柔らかく聞こえる表現になるでしょう。
「誠に勝手ながら」の例文
誠に勝手ながらは、具体的にどのようなシーンで使われるのでしょうか。例文を交えながら確認しましょう。
休業や閉店の場合
コンビニエンスストア・ガソリンスタンド・レストランなど、お客様を相手に運営している店舗では、休業や閉店をする場合に張り紙やHPなどでお知らせをすることがあります。
単純に理由だけを述べた上で休業・閉店する旨を示す文章にしてしまうと、大事な目的があったり楽しみにしていたりしたお客様が、大きなショックを受けることもあるでしょう。
しかし、文頭に誠に勝手ながらを添えることで、ショックを和らげられる上に、謝意も表現できます。
▼使い方の例
・誠に勝手ながら、本日○月○日は社員研修のため休業いたします。お客様には大変ご迷惑をおかけしますが、何卒ご了承くださいますようよろしくお願い申し上げます。
・誠に勝手ながら、当店は○月○日をもちまして閉店することとなりました。開店以来のご愛顧、誠にありがとうございました。
日程の調整をお願いする場合
ビジネスにおいて、日程調整は最も重要なタスクの一つです。特に、こちらの都合で日程を決めたい場合は、相手にお願いをするスタンスでアプローチすべきでしょう。
このようなとき、誠に勝手ながらを一言付け加えれば、へりくだりながら相手へのお伺いをたてるニュアンスで表現できます。
▼使い方の例
・誠に勝手ながら、下記日程の中からご都合のよろしい日時をお選びいただき、お返事くださいますようよろしくお願いします。
お休みがほしい場合
身内の不幸や子どもの急な病気、ベッドから出られないような体調不良などで、どうしても会社を休まざるを得なくなることもあるでしょう。
メールなどで上司や会社に連絡する場合、誠に勝手ながらを文章に添えることにより、「突然のことでどうしようもない判断だった」という気持ちを丁寧に伝えられます。
この場合は、お伺いを立てるニュアンスは含まれておらず、許しを請うような意味合いの表現になります。文章自体もきっぱりと「休む」ことを宣言すべきです。
▼使い方の例
・本日は朝から体調不良のため、欠勤いたします。誠に勝手ながら、ご了承のほどよろしくお願い申し上げます。
・昨夜より子どもの熱が下がらず、誠に勝手ながら、本日は休みをいただきます。
催促をしたい場合
メールの返信がなかなかこなかったり、頼んでいた書類が届かなかったりと、先方に急いでもらいたい状況はビジネスシーンで多々発生します。
後から催促しなくてもいいように、メールの返信や書類提出の期限をあらかじめ定めておきたい場合もあるでしょう。
このようなときに、誠に勝手ながらを一言はさんだ文章にすれば、丁寧な言い回しで催促できます。伝えにくい本音に添えて相手への気遣いを示すという、クッション言葉の真骨頂ともいえる使い方です。
▼使い方の例
・会場変更の件でございますが、誠に勝手ながら、○月○日までにご返信いただけますでしょうか。
・誠に勝手ながら、締切は今週の金曜日までとさせていただきます。
「誠に勝手ながら」の類語も紹介
ビジネスで使用する言葉においては、類似表現をより多く身につけることで、表現の幅を広げられます。誠に勝手ながらの言い換えをいくつか覚えておきましょう。
ご迷惑をおかけしますが
『ご迷惑をおかけしますが』は、相手に何らかの不利益を与えてしまうことを事前に知らせるニュアンスを含んだ表現です。
似た意味のフレーズとして、『ご面倒をおかけしますが』もあり、クッション言葉として同じように使用できます。
▼使い方の例
・ご迷惑をおかけしますが、○月○日までにご返送いただければ幸いです。
誠に恐れ入りますが
『恐れ入る』という言葉は、『恐縮する』『申し訳なく感じる』という意味の動詞です。
『誠に恐れ入りますが』とすれば、自分の至らなさで迷惑をかけてしまい、大変申し訳なく思う、という気持ちを表現する言葉になります。
▼使い方の例
・お忙しい中誠に恐れ入りますが、何卒ご出席いただきますようよろしくお願いします。
・誠に恐れ入りますが、○月○日の入金までしばらくお待ちください。
お手数をおかけしますが
『お手数をおかけしますが』は、相手が労力・費用・時間などを費やすことに対し、申し訳なく思う気持ちを伝える表現です。
『お手数』と『おかけしますが』に『お』が2回出てきますが、それぞれ尊敬と謙譲を意味する語であり、二重敬語ではないため、文法の上でも正しい言葉です。
▼使い方の例
・大変お手数をおかけしますが、明日そちらにお伺いしてもよろしいでしょうか。
・お手数をおかけしますが、ご希望内容について詳しくご教示いただけますでしょうか。
まとめ
誠に勝手ながらは、自分の都合によるお願いや判断を相手に伝える言葉です。言いにくい文章に添えて気遣いを示せるクッション言葉の一つでもあります。
電話・メール・会話など、さまざまな場面で利用でき、目上の人にも使えます。正しい意味や使い方を理解し、上手に活用しましょう。