今から身につけるべきは、3つの“おひとりさま資源”!
80歳以上の女性の6割以上が将来シングルになる(出展先:性・年齢階級別有配偶率、国立社会保障・人口問題研究所調べ)という背景のなか、女性がひとりでも老後を楽しく暮らせるために備えておくべきこととは、経済的、人的セーフティネットだと上野さんは説く。その中身とは……。
1、自活できる!経済力
「老後を安心して暮らすためにまず確保すべきなのは住居。そして自活するための経済資源、つまり年金と資産です。介護保険、年金保険は絶対に入っておくべき。
介護保険は40歳以上の人なら加入する義務がありますが、万が一病気や事故で障害を持った時に、障害年金は国民年金や厚生年金に加入していないとおりないので注意が必要です
おひとりさまの老後にかかる生活費については、これまでの暮らしぶりや地域にもよるため一概には言えませんが、日本の老齢年金制度では、女性に限らず男性でも年金だけでは充分ではないことがほとんど。とりわけ国民年金では暮らせません。そもそも高齢者が年金だけで暮らすことを想定せずに制度設計したのに、想定外の長寿化で、年金だけを唯一の収入源とする高齢者世帯がこんなに増えるとは予想していなかったのです。厚生年金も年々給付水準が切り下げられています。そのため、年金に加えわずかでもいいので毎月何らかの収入があると安心です。年金に加えて不足分をまかなえるだけの貯蓄を、今から始めるのは大切なことです」
2、老後こそ生活を維持する能力が大切!健康管理能力
「生活を維持するための健康管理能力ももちろん必要。きちんとした食生活をして、清潔を保つことは基本のき。人間は結局食べたものがカラダをつくりますから、何を食べるかは大事。その点、女性は家事能力があるから心配いりませんが、男性は栄養バランスの悪いファストフードやコンビニ弁当ばかり食べて、体調を崩すひともいます。女性ではダイエットのしすぎで低栄養状態になる人もいます。」
3、孤立しないための人的資源力
人的セーフティネットとは、例えばご飯をひとりで食べたくないときに誘えるテーブルメイトをストックしておく、というようなこと。老後はベッドを共にするベッドメイトより、一緒にご飯を美味しく楽しく食べられる相手が居ることの方が重要になってきます。親友よりゆる友です。そういう関係を築くには時間がかかるから、今からそういう人脈を作り、メンテナンスをしておく努力をしておくといいですね。
おひとりさまとは、孤立することではなく、『ひとりで過ごす自由を選べる』ということ。人はひとりでは生きていけないですから。必要なときには頼れる「人的資源」があるからこそ、ひとりでも居られるけど、誰かと過ごすという自由と選択肢を手にできるんです。そのための用途別パートナーを色々持っておくと自由度が高まる。例えば自分が別荘を持っていなくても別荘を持っている人を調達できるとか、そういうコネを手に入れる能力があると、お金がなくてもより楽しく生きられますよね」
結婚が一生ものではなくなった時代だからこそ、結婚をいつでも好きなときに辞められる選択肢を持っておくことが現代女性の必須条件。そのためにも、これらの「おひとりさま資源」が必要だということを心に留めておきたい。
ちなみに上野さんご自身は生涯独身を貫いている。
その理由は、「パートナーが居るときはありますが、法律婚という契約で相手を縛りたくないし自分も縛られたくない」だからだそう。
人生100年時代、結婚してもしなくても、精神的・経済的自立は女性が生きるための必須条件と言えそうだ。
Profile:上野千鶴子さん
東京大学名誉教授。認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク理事長。日本における女性学・ジェンダー研究の第一人者として知られ、『おひとりさまの老後』(文春文庫)、『おひとりさまの最期』(朝日新聞出版)、『女ぎらい』(紀伊国屋書店/朝日文庫)など著書多数。
Interview & Text : Moyuru Sakai llustration:Youmi Chen
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