再婚禁止期間とは?
離婚した女性は、一定期間の間、再婚できない決まりになっています。これは、離婚した後に妊娠が発覚した場合に、父親がだれであるかを明確にするために設定された法律。離婚した男性にはなんの制約もないことから、賛否の意見が分かれています。
日本の離婚状況と再婚状況を知ろう
現在の離婚状況や、離婚した人の再婚状況などを理解しておきましょう。どの程度の人が、再婚禁止期間の制約の対象となっているのでしょうか。
日本の離婚率と傾向は?
年々離婚率が上がっている現代ですが、全国では30%から40%の離婚率といわれています。また、年齢でみると、30代から40代の人の割合が最も多いという結果が分かっています。結婚して5年から10年での離婚率が最も多い傾向があります。婚姻期間が20年以上ある夫婦を熟年夫婦と呼びますが、熟年離婚も少なくないのが現状です。
離婚する理由はさまざまですが、性格の不一致、浮気や不倫などの異性問題、暴力、金銭感覚の不一致などが挙げられます。全体の離婚率増加の要因として、熟年離婚、ナシ婚(結婚式を挙げない夫婦のこと)の増加、親の離婚歴などが考えられます。
熟年離婚は子供の自立や定年退職を迎えることで自分の生活を見直すきっかけとなったり、子供が成人したことがきっかけになったりして離婚に踏み切るケースが多いです。
ナシ婚夫婦というのは結婚式を挙げない夫婦のことを指しますが、結婚式を挙げなかったことで絆や責任感が希薄になる可能性が考えられます。
親の離婚歴は一見無関係のように思えますが、身近で離婚した人を見ていると離婚へのハードルが低くなる傾向があり、自らも離婚しやすいという説もあります。
離婚してから再婚までの期間は?
再婚禁止期間の制約もあり、離婚した4割近くの人が3年以内に結婚しているという現状です。5年以内の結果で見てみると、約5割の人が再婚していることが分かっています。
離婚率や再婚する確率を見てみても、昔に比べると離婚へのイメージはネガティブなものばかりではなく、幸せになるための手段の一つとして考えられていることが分かります。
再婚禁止期間の制約は?
離婚した男性への制約はまったくありませんが、離婚した女性のみが対象となる再婚禁止期間。制約の内容や意義についてしっかりと理解しておきましょう。
制約の内容
再婚禁止期間とは、女性が離婚してから100日間は再婚してはいけない期間のことを取り決めた制約です。離婚だけではなく、夫の死亡などにより婚姻関係を解消した日から100日間は再婚できない定めがあります。以前は6カ月でしたが、2016年3月より期間が変更されました。
離婚してから100日以内に再婚した場合、憲法違反となってしまうので注意しましょう。
ただし、離婚時に妊娠していなかった場合は、100日以内でも再婚できるケースもあります。
再婚禁止期間の制約は、離婚後に発覚した妊娠の父親を明確にすることが目的。そのため、離婚時の妊娠が一つの判断ポイントになるといえるでしょう。
再婚禁止期間がある意味
再婚禁止期間は、父子関係を確定し、父子関係をめぐる紛争を未然に防ぐことが目的で制定されました。出産した子供の母親は分娩の事実から明らかですが、父親に関してはDNA鑑定を行わないかぎり分からないことが多いです。
再婚禁止期間の制約がなかった場合、妊娠に気づかずに離婚したあとすぐに再婚してしまうと、子供の父親が、母親でさえも分からない状態になり兼ねません。
現代では高精度なDNA鑑定があるので父親を判別することが可能になりましたが、医学が未発達の時代にはこのような取り決めをしておかないと、父子関係をめぐる争いが起こってしまう懸念があったのです。
再婚禁止期間が適用されるのは女性のみ
再婚禁止期間が対象とするのは離婚した女性のみ。離婚したときに妊娠していた場合、父親を明確にするための制約なので、男性への適用はなく女性のみが適用されます。
ただし、離婚時に妊娠していなかったことが証明できたり、離婚した夫との復縁だったりする場合は除外されます。他にも、夫が3年以上行方不明で裁判離婚が成立している場合や、子宮の全摘出手術を受けている女性が医師の証明書を裁判所に提出した場合なども除外の対象となります。
再婚禁止期間が短くなったのはなぜ?
再婚禁止期間は離婚後100日間です。これは2016年3月から施行された法改正によるもので、それ以前は離婚後半年間が再婚できない期間とされていました。
そもそもの立法目的は、離婚後に妊娠が分かった場合の父親を明確にすることだったので、父親がどちらかを明確にできない問題を回避するための期間として100日間が妥当と判断されました。
100日間は合理性・相当性が認められるとしても、それを超えてまで再婚を禁止することは正当化できないという裁判所の判断ということになります。
再婚禁止期間に関しては、女性のみが対象となることや、医学の進歩によって父子関係を明確にできるといった観点から制約が不要であるという意見もあります。
再婚禁止期間に関する規則
再婚禁止期間の規則にはどのようなものがあるのでしょうか。知らずに禁止期間に再婚の手続きができてしまうと、罰則が与えられるわけではありませんが、出産した子供の父親を裁判所に決められてしまうので、きちんと理解しておくことが大切です。
父親を決める際の規則
父子関係での争いを防ぐために制定された再婚禁止期間では、父親を決める際の規則があります。離婚して300日以内に生まれた子供は前夫の子、再婚して200日後に生まれた子供は今の夫の子になります。これは嫡出推定と呼ばれ、反論の証明がされない限りは父親として証明されたものとみなされます。
反論の証明とは、離婚する以前であっても母親が子供を宿した時期に夫婦関係が破綻していたことや、遠隔地に居住しており性的関係をもつことが不可能であったことなどが挙げられます。
このように第三者の目から見ても前夫との子供ではないと明らかに判断される場合に限り、反論の証明として有効になる可能性が高いです。
再婚禁止期間以内に再婚してしまったときの規則
基本的に、再婚禁止期間以内で婚姻届けを提出しようとしても、役所で受理されません。もし手違いなどで受理されてしまった場合は、生まれた子供の父親は裁判所が決める規則となっています。
裁判所が決めた父親と実際の父親が違うと分かっていても、覆すことはとても困難です。離婚したのちに再婚を考えている場合は、しっかりと再婚禁止期間を理解し、その期間内は婚姻届けを出さないことで回避するしかありません。法令なのでしっかりと遵守するようにしましょう。
ただし、妊娠していなければ再婚禁止期間を守る必要はありません。その際には、離婚時に妊娠していなかったこと、離婚後に出産したことを医師によって証明してもらう必要があります。その証明があれば、再婚禁止期間内であっても再婚することは可能になります。
再婚禁止期間の問題点は?
再婚禁止期間が施行されていますが、賛否の意見が分かれています。どのような問題点が挙げられるのでしょうか。
女性差別に繋がる
再婚禁止期間の制約は、離婚した女性にのみ出されていることなどから、女性差別にあたると指摘されています。この指摘は、男女平等を唱っている憲法に違反するのではないかという考えに基づいています。
また、婚姻や離婚に関する法律は個人の尊厳と両者の平等のもと定められるという憲法にも違反しているという意見も。
憲法にこのような文章が存在するにも関わらず、女性にのみ制約が設けられていることが合理性に欠く、ということが問題視されている要因です。
離婚がうまく進まなかった場合
実質的に離婚状態であっても、正式な離婚となるとスムーズに進まないことがあります。その間に妊娠して300日以内に出産してしまった場合、違う男性が父親であるにも関わらず、法律上では前夫が父親となってしまうケースがあります。
これは、再婚後200日以降に生まれた子供は再婚相手の子供、離婚後300日以内に生まれた子供は前夫の子供と推定される規則と、再婚禁止期間の関係性が要因です。
どれだけ夫婦関係が破綻していたとしても、正式に離婚が決まらない限り、300日以内に出産した子供は法的には前夫との子供になってしまうのです。
もちろん、離婚後に妊娠したということが明らかであれば問題ありません。
もし離婚の手続きがうまく進まず、離婚から300日以内に出産してしまった場合は、医師から懐胎時期に関する証明書を発行してもらい、出生届と合わせて提出するようにしましょう。
離婚前に妊娠が分かっていたら
離婚前に妊娠が分かっている場合、以下の3種類の手続き方法が存在します。
(1)子供の出生から1年以内に前夫が起こす「摘出避妊調停」が認められる
(2)母親か血縁上の父親が「親子関係不存在確認調停」を起こし認められる
(3)血縁上の父親を相手に「認知調停」を行う
これらの方法で解決できることもあります。
再婚禁止期間に対してどう思う?
再婚禁止期間に関しては、離婚した女性のみに課せられる制約ということもあり、賛否が分かれるものです。実際の賛否の意見として、どのような意見があるのか知っておくことも大切です。
父親はDNAでわかる
現代では医学の進歩もあり、DNA鑑定で父親をはっきりさせることができるようになりました。これに伴い、もう再婚禁止期間は必要ないという意見もあります。
ただし憲法には、婚姻中に妊娠した子供は夫の子供になるという記載があるため、血縁関係の有無にかかわらず法律上では離婚する夫の子供とされてしまいます。
再婚禁止期間は、離婚時期に懐胎した子供の父親を明確にするためという目的で制定されたもの。それにもかかわらず正式離婚から何日後に出産したかによって法律上の父親が決まってしまうため、血縁上の父親と法律上の父親との間に矛盾が生じてしまう結果となってしまいます。
女性差別とも言い難い?
再婚禁止期間の制約は、女性のみが対象となっていることから、女性の再婚が禁止されているように感じてしまいますが、その女性との結婚を望んでいる相手の男性も再婚禁止期間に該当するのではないかという考えもあります。
婚姻関係は男女の同意があって成立するもの。そのため、女性のみが禁止されているのではなく、男女ともに100日間の再婚禁止期間が設定されているという考えに基づいた意見になります。
再婚を希望するのは常に男女というペアで存在するため、女性だけが禁止されているのではなく、男女が対象になっているという考え方もできます。
再婚禁止期間を知ったうえで再婚して幸せになろう
離婚後の子供の父親を明確にするために制定された再婚禁止期間。あくまでも子供の父親が誰なのかをはっきりさせるための制約であって、女性の再婚を禁止する目的ではありません。
再婚相手との妊娠を希望する場合には注意しましょう。正式に離婚が成立していても、出産した日によっては前夫の子供となってしまうケースがあるので、きちんと確認しておくことが大切です。
再婚は、幸せになるための手段の一つ。再婚相手との子供の出産にも関することなので、知識を深めて、誰もがいやな思いをすることがないように進めていきましょう。